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アジア諸国の知的財産制度 − 山上和則先生古稀記念


アジア諸国の知的財産制度 − 山上和則先生古稀記念
 
編・著者小野昌延・岡田春夫 編
判 型A5
ページ数744
税込価格6,912円(本体価格:6,400円)
発行年月2010年09月
ISBN978-4-417-01519-2
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■解説
『アジア諸国の知的財産制度』
- 山上和則先生古稀記念 -

編集■小野昌延・岡田春夫

A5判・744頁 税込定価6,720円

第一線の専門家による総合的解説書

主要なアジア諸国別に,特許法のみならず, 商標法,意匠法,不正競業法まで,知的財産法制全般を,詳細に解説。実務家・企業家,必携の書!


ISBN978-4-417-01519-2 C3032

■書籍内容
目次

第1編 総   論
 序 章 アジア知的財産政策と制度 過去・現在・未来 
  ――アジア法・開発法学の視点から
  参考文献/参考サイト


第2編 各 国 各 論

第1章 カンボジア――Kingdom of Cambodia〔三村まり子〕
第2章 中国――People's Republic of China〔中島敏〕
第3章 香港――Hong Kong〔黒瀬雅志〕
第4章 インド――India〔山名美加〕
第5章 インドネシア――Republic of Indonesia〔角田嘉宏〕
第6章 韓国――Republic of Korea〔李厚東〕  
第7章 ラオス――Lao People's Democratic Republic〔小口光〕
第8章 マレーシア――Malaysia〔深見久郎=竹内耕三〕
第9章 モンゴル――Mongolia〔磯井美葉〕
第10章 フィリピン――Republic of the Philippines〔平野惠稔=ジェイソン・ホセ・ジャオ
第11章 シンガポール――Republic of Singapore〔岡田春夫〕
第12章 台湾――Taiwan〔鮃隻辧畩疂験戞
第13章 タイ――Kingdom of Thailand〔小原正敏〕
第14章 ベトナム――Socialist Republic of Viet Nam〔牧山嘉道=森山義子=宝田恵理子〕

第3編 〔資料〕各国対照表
 各国対照表(1)【日本・カンボジア・中国・香港・インド】編
 各国対照表(2)【インドネシア・韓国・ラオス・マレーシア・モンゴル】編
 各国対照表(3)【フィリピン・シンガポール・台湾・タイ・ベトナム】編
 
山上和則先生略歴



まえがき

 本書は,アジア諸国の知的財産法制度及びその法運用状況等に関する概説書である。
「アジアは一つ」といわれるが,このアジアという言葉自体,極めて多義的である。
この「アジア諸国の知的財産法制度」は,むしろ「東洋主要国の知的財産法制度」と
いうべきであろう。ところで,真のグローバリズムは,理念として望ましい。しかし
日本としては,現実にはそこに行き着くまでの一段階として,むしろ,東アジアと
西南アジア及びその周辺国のグループ化が必要である。すなわち,東洋(アセアン+α)
のグループ化が必要である。これを背景に発言しないと,他のアメリカ・ヨーロッパ等
を含む場での,アジア諸国の主張は通らない。このように考える者にとって,この
「アジア地域の法の性格は多様性にある」からといって,グループ化を断念することは
できない。したがって,余計にこれらの国々の多様な知的財産法制度の知識が必要である。
なぜなら,このアジア諸国においてわが国が名誉ある地位を占めるには,わが国の技術力
を梃子にする他ないからである。
 また,この地域を足がかりとして,国際的に生産・販売活動をしようとする経営者・
実務者にとっても,もっと小さくこの地域の一角――例えば,中国なら中国,インドなら
インド――に生産拠点や販路を求めようとする者にとっても,知的財産法制度の知識が
必要である。日本が再度世界に雄飛するためには,わが国の技術力を梃子にすること以外に
道がない。言い換えれば,その国と周辺国の知的財産法制度の知識が必要である。
 振り返ってみれば,知的財産制度については,日本では明治22年(1889年)の憲法制定前,
明治17年(1884年)に商標条例が,明治18年(1885年)に特許条例が制定されていた。
このことを思い起こされたい。それは制定にかかわった高橋是清翁の先見の明による。
それとともに,知的財産制度の制定が当時の日本に必要であったからである。
 すなわち,外国において活動し,あるいは,営業しようとする企業者は,その国に
ついての概要の知識が必要である。それとともに,会社法・税法・労働法などの知識が
必要である。これらとともに,「知的財産法制度」を知る必要がある。民事法すら明らか
でない開発途上国において(日本民法は明治31年(1898年)施行),特許などは無縁のもの
という考えは誤っている。すなわち,当該開発途上国において,欧米の投資者どうしは
競争しているのである。だから,企業者にとって,アジア諸国の知的財産制度に関する
知識は必須のものである。受け入れ側にとっても,技術の輸入・投資の促進など経済の
発展のためには必要である。当時,その後の日本の「経済発展に必要な制度は何か」
ということに対して,高橋是清翁に先見の明のあったことは,この所以である。
 このような知的財産法制度に対する整備・調査,あるいは,途上国の法制度整備支援
については,現在,法務省法務総合研究所の国際協力部や財団法人国際民商事法センターが
行っている。地味ではあるが,アジアの各種法情報の収集を行っている。そこでは,
単に法情報のみならず,広く対象国の法律学・法理論に関する情報,さらには,
政治・社会・歴史・文化等の隣接分野に関する情報も,法整備に必要であることまで
気付いている。さらには,学術的・体系的な分析までも必要なことに気付いている。
しかし,とてもそこまで拡げる予算的余力はない。この知的財産制度についても,
当初,法務省法務総合研究所の国際協力部や財団法人国際民商事法センターにおいて,
アジア数ヵ国の調査が行われたが,その後は予算不足で打ち切りとなった。
このような調査は,海外投資に直接関連する会社法・税法・労働法などのほか,
独占禁止法などの経済法,さらには,基本的な民事法・刑事法,また民事訴訟法・
刑事訴訟法などに途上国の広範な援助要請がある。そのゆえに,打ち切りも止むを
得ないところである。このような各国の法制度の情報の蓄積は,到底民間の学者一人に
期待できない。といって,他の財団・各法科大学院などに今日期待できない。
 これらの理由で,アジア諸国の知的財産法制度・法運用の状況に関する書籍もまた,
しばらく刊行されていない。1995年に,財団法人知的財産研究所編集の『アジア諸国に
おける知的財産保護』が出版され,これは極めて貴重なものであるが,その後の各国の
変化には眼を瞠るような大きな法変革がなされている。また,2006年に,財団法人
国際民商事法センター監修・アジア太平洋知的財産権法制研究会編集の『アジア諸国に
おける知的財産権の行使(エンフォースメント)』が刊行されたが,これは6ヵ国の
2004年現在の知的財産権のエンフォースメントのみであって,その他には及ばないまま,
今日に至っている。また,民間では本書に執筆された黒瀬雅志氏の『アジアの[知的財産]
戦略』などもあるが,1994年と古く,かつ,模造品対策中心の調査で,アジア諸国に
おける知的財産保護全体については,むしろ同書末尾の参考文献の個別のものの集積に
よらざるを得ないし,その後は黒瀬氏のもののような十数ヵ国を1冊にまとめられた
便利なものはない。新しいものでは,2009年の中川博司氏の『東アジアの商標制度(機法戞
『東アジアの商標制度(供法戮里茲Δ望楮戮覆發里發△襪,商標制度のみで知的財産保護
全体ではない。特許制度についてのものも同様であって,アジア諸国においては,
特許のみならず,商標・不正競争やエンフォースメントなどがより重要である。
1冊にまとめられた財団法人知的財産研究所『アジア諸国における知的財産保護』のような
ものが望ましいが,かようなものはない。同研究所も,最近ここまで手を伸ばす予定は
ないとのことであった。しかし,今日,ハンディな書籍で,アジア諸国の知的財産法制度・
法運用の全体的状況に関する情報が知りたいという現実的要請はある。
そこで各対象国について,現在最も適当な権威の方々によって,アジア諸国の知的財産
制度に関する便利な解説書が企画された。なお,Ms. Jacqueline Chan, Ella Cheong Patent,
Design & Trade Mark Agents(Hong Kong), Ms. Murgiana Haq(Singapore),
Mr. Alonzo Q. Ancheta, A.Q., Ancheta & partners(Philippines),
Dr.Insan Budi Maulana, Lubis, Santosa & Maulana Law Offices(Indonesia)が,
内容でなく,統計数字について,チェックに協力していただいた。厚く感謝する次第である。
そして,本書が山上和則先生の古稀記念として出版されることとなり,先生と関係の
深い私が編集にも携わり,かつ,その序文を書くこととなった。なお,青林書院編集部
藤田朋子さんには多大の御苦労をかけた。ここに厚く感謝の意を表する。
 ところで,献呈を受ける山上和則先生は,1962年に大阪大学工学部冶金学科を卒業
された後,民間企業の研究所勤務を経て,中央大学法学部に学士入学された。
父君・山上孫次郎弁護士の勧めもあってか,このときに既に知財弁護士の道を志して
おられた。そして,1965年に中央大学法学部を卒業されて,1968年に弁護士登録をする
とともに,当時知財法の専門家として知られていた馬瀬文夫法律事務所に入られた
俊才である。他方,私は,大阪で確たる地位を築いておられた角恒三先生の法律事務所に
1955年から3年余お世話になった。角恒三弁護士と馬瀬文夫弁護士は角源泉法律事務所の
同門であった。そして,同じ朝日新聞社ビルにおられ,毎日のように互いに往き来して
おられた。このような関係から,当時,司法修習生として馬瀬先生から指導を受けて
おられた山上先生を紹介された。そのころからの旧知の間柄である。
山上先生は,フルブライト留学生として,1972年にウィスコンシン州立大学ロー・
スクールの修士課程を修了されて,すぐカリフォルニア州のGraham & James法律事務所で
1年間研修を積まれた後,今度は弁護士として馬瀬文夫法律事務所に入られた。
その後順調に,知財弁護士,外国事件弁護士の道を歩まれた。私も,知財事件を何件か
山上先生とともに携わったこともある。また,山上先生は,1992年から93年にかけ
日本弁護士連合会知的所有権委員会の委員長をされ,1998年から2年間,
日本ライセンス協会会長をされた。これも,先生の学識・人徳から当然のことである。
2004年には,先生はその学識をかわれて京都大学法科大学院の特別教授に任用された。
このように知財弁護士,渉外事件弁護士の道を先駆けとして歩まれた。
この山上和則先生が,本書の献呈を受けられるのは真に至当のことといえよう。
 
2010年7月              小野昌延

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