青林書院



知的財産権 法理と提言 牧野利秋先生傘寿記念論文集


知的財産権 法理と提言 牧野利秋先生傘寿記念論文集
 
編・著者中山信弘・斉藤 博・飯村敏明[編]
判 型A5
ページ数1224
税込価格17,280円(本体価格:16,000円)
発行年月2013年01月
ISBN978-4-417-01584-0
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■解説
●裁判官としてあるいは弁護士として長きにわたり知的財産分野の発展に寄与されてこられた 牧野利秋先生の傘寿を記念し,日々第一線で活躍される国内外の裁判官,学者,弁護士が知的財産分野に携わる方すべての論究の道標となるべく論述を展開する論文集


■巻頭言
牧野利秋先生の傘寿を言祝いで
 
 牧野利秋先生は,平成25年1月24日で満80歳をお迎えになり,先生を師と仰ぐ我々にとっても嬉しい限りです。
 牧野先生といえば,知的財産法の世界では実務的な面のみならず,理論的な面においても巨星であることに異論はなく,長い間裁判官として,ご退官後は弁護士として,知的財産界をリードして来られました。牧野先生が東京地裁の民事29部(特許部)に配属されたのは昭和42年のことで,私がまだ学生で司法試験の勉強に明け暮れていた頃です。私が助手として知的財産の研究を始めたのは昭和44年ですが,当時は何をどのように勉強したらよいのか,皆目見当もつきませんでしたが,牧野先生は当時既に難しい知的財産訴訟の指揮をとっておられたわけですので,驚嘆の限りです。

 牧野先生は裁判官,弁護士として著名であることは言うまでもありませんが,裁判官としては珍しく博士号を取得され,教育者としてもご活躍され,司法研修所教官のほか,筑波大学大学院,早稲田大学法学部・法学研究科講師,慶應義塾大学法科大学院でも教えておられ,また多くの講演をなされ,そして数々の論文を執筆されておられます。特に我々後進の者にとって,何と言っても忘れることができないのは,キルビー最高裁を引き出した,世に言う牧野先生の卒業論文としてのあの高裁判決です。あのような結論が好ましいであろうということは多くの者が認めておりましたし,私も論文で公知技術の抗弁等の理屈を捏ねておりましたが,権利濫用で解決するという勇気はありませんでした。原審のように権利範囲に入らない,という判決を下しておけば,最高裁で覆る可能性は極めて低く,普通の裁判官であれば原審の判断の理由付けを維持したであろうと思われます。権利濫用の法理は,通常は,まともな権利はあるが権利の行使の仕方が悪い場合に用いる法理と考えておりましたが,牧野判決では権利自体が腐っていれば,行使方法に関わらず権利濫用になるというものでした。理論的には可能であるということは判ってはいたものの,この牧野判決で,権利濫用とは権利の行使の仕方が悪い場合にのみ利用される法理ではなく,新たな抗弁が確立するまでの橋渡し的な利用方法もあるということを,現実の裁判で初めて思い知らされました。そして現にこの牧野判決は,特許法104条の3の権利行使の制限の規定として結実し,権利濫用の法理が立派に架橋の役割を果たしました。その立法過程において,知的財産戦略本部も司法制度改革推進本部も,この牧野判決により敷かれたレールの線上での議論がなされ,せいぜい「明らか」要件を条文に入れるか否か,という点が議論されたに過ぎませんでした。このように明治37年の大審院以来確立されてきた法理を,権利濫用論を用いて一気にひっくり返すということは,裁判官としては非常に勇気のいる決断であったろうと推察いたします。このような牧野先生の判断が,わが国の特許法の歴史に残る発展の原動力になったと考えております。

 このほかにも牧野先生は多くの有名な判決に関わっておられます。たとえば昭和57年にコンピュータプログラムが著作権により保護される著作物であるとの判決を出され,これは昭和60年の著作権法改正につながり,プログラムは著作物に該当するということが確定いたしました。そのほかにも,ワン・レーニー・ナイト・イン・トウキョウ事件を始め,私の講義でも使用させて頂いた多くの事件を担当しておられました。

 牧野先生のお人柄について言えば,「温和」の一言に尽きると思います。私は70年に近い人生において,このような温和な方に出会ったことがありません。私は,弁護士になってまだ日が浅いのですが,全ての裁判官がこのように温和な方だとどれほど良いことか知れない,と何度も思いました。

 このように,牧野先生は知的財産法の揺籃期から現在のような繁栄期に至るまでの間,常に斯界をリードされてこられました。今後も末永く,我々後進の指導をして下さるように願ってやみません。(なお,牧野先生の業績やお人柄を知る最適なものとしては,「牧野利秋先生に聞く」T&L 54号(平成24年1月)があります)

明治大学特任教授・弁護士・東京大学名誉教授
中山 信弘


■【編集者】
中山 信弘(明治大学特任教授・弁護士・東京大学名誉教授)
斉藤  博(新潟大学名誉教授,弁護士 虎ノ門総合法律事務所)
飯村 敏明(知的財産高等裁判所長)

■【執筆者(五十音順)】
青柳 沙辧癖杆郢痢\通法律特許事務所)
飯田 秀郷(弁護士 はる総合法律事務所)
飯村 敏明(知的財産高等裁判所長)
井上由里子(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)
伊原 友己(弁護士・弁理士 三木・伊原法律特許事務所)
岩坪  哲(弁護士・弁理士 弁護士法人関西法律特許事務所,甲南大学法科大学院教授)
大渕 哲也(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
尾崎 英男(弁護士 シティユーワ法律事務所)
片山 英二(弁護士・弁理士 阿部・井窪・片山法律事務所)
君嶋 祐子(慶應義塾大学法学部教授)
熊倉 禎男(弁護士・弁理士 中村合同特許法律事務所)
小池  豊(弁護士 小坂・小池・櫻井法律事務所)
小泉 直樹(慶應義塾大学教授)
古城 春実(弁護士 ビンガム・マカッチェン・ムラセ外国法事務弁護士事務所
          坂井・三村・相澤法律事務所(外国法共同事業))
小松陽一郎(弁護士・弁理士 小松法律特許事務所,関西大学法科大学院特別任用教授)
斉藤  博(新潟大学名誉教授,弁護士 虎ノ門総合法律事務所)
佐藤 恵太(中央大学法科大学院教授)
塩月 秀平(知的財産高等裁判所判事)
設樂 楼譟陛豕高等裁判所判事)
清水  節(徳島地方家庭裁判所長)
城山 康文(弁護士 アンダーソン・毛利・友常法律事務所)
末吉  亙(弁護士 潮見坂綜合法律事務所)
椙山 敬士(弁護士 虎ノ門南法律事務所)
高林  龍(早稲田大学教授)
睇眞規子(知的財産高等裁判所判事)
滝井 朋子(弁護士 滝井法律事務所)
田中 成志(弁護士・弁理士 青木・関根・田中法律事務所)
茶園 成樹(大阪大学大学院高等司法研究科教授)
塚原 朋一(早稲田大学大学院法務研究科教授,弁護士 TMI総合法律事務所)
戸波 美代(専修大学法学部兼任講師)
土肥 一史(日本大学大学院知的財産研究科教授・一橋大学名誉教授)
中平  健(大分地方裁判所判事)
林 いづみ(弁護士 永代総合法律事務所)
平嶋 竜太(筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻教授)
前田 哲男(弁護士 染井・前田・中川法律事務所)
牧野 知彦(弁護士 ビンガム・マカッチェン・ムラセ外国法事務弁護士事務所
          坂井・三村・相澤法律事務所(外国法共同事業))
松尾 和子(弁護士・弁理士 中村合同特許法律事務所)
松田 俊治(弁護士 長島・大野・常松法律事務所)
松村 信夫(弁護士・弁理士 大阪市立大学法科大学院特任教授)
松本  司(弁護士・弁理士 弁護士法人 関西法律特許事務所)
松本 直樹(弁護士 松本法律事務所)
水谷 直樹(弁護士・弁理士 水谷法律特許事務所)
光石 俊郎(弁護士・弁理士 光石法律特許事務所)
宮川美津子(弁護士 TMI総合法律事務所)
三山 峻司(弁護士・弁理士 中之島シティ法律事務所,京都産業大学大学院法務研究科教授)
毛利 峰子(弁護士・ニューヨーク州弁護士 経済協力開発機構(OECD)事務局)
森  義之(横浜地方裁判所判事 現 和歌山地方・家庭裁判所長))
紋谷 崇俊(弁護士・弁理士・ニューヨーク州弁護士,法政大学法学部講師,
      立教大学法科大学院講師,金沢工業大学客員教授)
横山 久芳(学習院大学法学部教授)
吉田 和彦(弁護士・弁理士 中村合同特許法律事務所,東北大学特任教授(客員))
張  暁霞(北京市第一中級人民法院民事審判二廷副庭長)
 翻訳:
  井口 直樹(弁護士 長島・大野・常松法律事務所)
  瀋   暘(外国弁護士 TMI総合法律事務所)
  濱本 浩平(弁護士 アンダーソン・毛利・友常法律事務所)
  芳川 瑛子(弁護士 アンダーソン・毛利・友常法律事務所)
劉新宇,李茂家,汪送来(弁理士 林達劉グループ・北京林達劉知識産権研究所・
                北京林達劉知識産権代理事務所)
  
■【事務局】
安江 邦治(弁護士 安江法律事務所)
末吉  亙(弁護士 潮見坂綜合法律事務所)
林 いづみ(弁護士 永代総合法律事務所)
吉田 和彦(弁護士・弁理士 中村合同特許法律事務所,東北大学特任教授(客員))
牧野 知彦(弁護士 ビンガム・マカッチェン・ムラセ外国法事務弁護士事務所
          坂井・三村・相澤法律事務所(外国法共同事業))

■書籍内容
目   次

巻頭言
牧野利秋先生の傘寿を言祝いで (中山信弘)
賢人の傘寿をお祝いして(斉藤博)

第1章 総  論
知的財産高等裁判所の創設及びその果たす役割について(飯村敏明)
経済的視点からみた特許判例(片山英二)
主張責任と立証責任の関係に関する若干の考察―知的財産法を例にして(吉田和彦)

第2章 特  許
1 侵 害 論
具体的態様の明示義務―特許法104条の2を中心に(尾崎英男)
特許権侵害訴訟における対象物件の特定についての一提案 (牧野知彦)
複数者が特許侵害に事実上関与している場合の侵害主体の認定(水谷直樹)
複数主体が介在する特許権侵害法理を巡る新たな方向性について(平嶋竜太)
「譲渡等の申出」と属地主義の原則(松本司)
「実施」概念の検討を通してみる「譲渡の申出」概念の意義(横山久芳)
統一的クレーム解釈論(大渕哲也)
クレーム及び明細書における用語の意味(古城春実)
燻し瓦製法特許事件(最高裁判所判決を中心に)(熊倉禎男)
プロダクト・バイ・プロセス・クレームの要旨認定とクレーム解釈についての考査(設樂隆一)
 プロダクト・バイ・プロセス・クレームの技術的範囲と発明の要旨(高林龍)
特許法101条4号の「その方法の使用にのみ用いる物」について (田中成志)
擬制侵害(特許法101条2号及び5号)に係る課題と検討(紋谷崇俊)
過失要件に関係する日米比較(松本直樹)
特許の分野における公権力の判断とそれに従った当事者の法的地位(小池豊)
特許無効の法的性質―発明権概念からの再論(君嶋祐子)
補正の新規事項追加への該当性(中平健)
審判請求時の補正とその却下の決定について(清水節)
冒認出願と実務上の若干の課題(小松陽一郎)
  
2 職務発明
職務発明制度に関する基礎的考察(飯田秀郷)
職務発明たる「外国の特許を受ける権利」承継対価の準拠法(末吉亙)
  
3 審決取消訴訟
特許に関する審決取消訴訟における新たな公知技術主張の可否(森義之)
審決取消訴訟の判決スタイルと進歩性判断(塩月秀平)
審決取消訴訟の手続構造と運営について(塚原朋一)

4 外国に関係する問題
中国における特許侵害訴訟の防御(城山康文)
日米欧における医療関連発明の特許保護の動向(林いづみ)
化学・バイオ・医薬分野のクレームの解釈(劉新宇,李茂家,汪送来)
知的財産権侵害に対する利得返還請求権の基礎的研究(張暁霞)
(翻訳者:井口直樹,瀋暘,濱本浩平,芳川瑛子)

5 ライセンス
当然対抗の実務的観点からの諸問題(岩坪哲)
当然対抗制度の特許権の通常実施権への導入と今後に残された問題について(松田俊治)

第3章 実用新案
実用新案制度再考(伊原友己)

第4章 種苗法
品種登録簿上の特性と育成者権の範囲(滝井朋子)

第5章 商  標
商標権の効力が及ばない範囲(競業者による自由使用の観点から)(青柳沙辧
商標法において権利濫用とされた裁判例の再構築(試論)(光石俊郎)
商標パロディ(土肥一史)

第6章 不正競争防止法
不正競争防止法の守備範囲(睇眞規子)
不正競争防止法と産業財産権法の交錯領域に関する若干の検討(松村信夫)
不正競争防止法による顧客吸引力保護の限界―死者のパブリシティ権の保護を事例として(宮川美津子)

第7章 著作権
著名人の肖像と私的領域(斉藤博)
複合的な性格を持つ著作物について(前田哲男)
 著作権法14条に関する著作権の認定をめぐる一考察(三山峻司)
 著作権の間接侵害に関する立法の要否について(小泉直樹)
 Millar v. Taylor(1769)判決におけるイエイツ判事の少数意見(椙山敬士)
「歪曲された『著作者の人格像』の伝達からの保護」と人格権(戸波美代)
 地図の著作物の創作性についての一考察(井上由里子)
 自動公衆送信・送信可能化概念とまねきTV事件最高裁判決(茶園成樹)

第8章 パブリシティ
 「ピンク・レディdeダイエット」パブリシティ権保護の成否(松尾和子)

第9章 ドメイン名
 gTLD「開放」に伴い生じる問題について(佐藤恵太)

第10章 能力担保研修
 牧野利秋先生と能力担保研修の準備をご一緒して(毛利峰子)
  
あとがき
 牧野利秋先生の傘寿記念論文集の発刊を祝して(飯村敏明)
 
 牧野利秋先生略歴・主要著作目録

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