青林書院



刑事政策概論〔全訂第七版〕


刑事政策概論〔全訂第七版〕
 
編・著者藤本 哲也 著
判 型A5判
ページ数534頁
税込価格5,940円(本体価格:5,500円)
発行年月2015年04月
ISBN978-4-417-01653-3
在庫有り
  
在庫があります

■解説
◆最新の刑事政策動向を踏まえ改訂
犯罪情勢と裁判制度の変動等に伴う法改正や犯罪対策及び処遇の様々な変更を盛り込み、
全分野で内容を見直し刷新を図った、待望の〔全訂第七版〕


はしがき

「光陰矢のごとし」というが,本書の初版が発行されたのが1984年
(昭和59年)であるから,本書は満30歳を迎えたことになる。本書
がこれほどまでに長くご利用頂けたのは,基本的なものの考え方を
変えていないということと,出版社のご配慮により,絶えず,本書
の内容を,新しい資料に基づいて刷新してきたことにあるといえる
であろう。そうは言うものの,全訂第六版が発行されたのが,2008
年(平成20年)のことであるから,6年以上の歳月が流れ,この間
の我が国の刑事政策の進展にはめまぐるしいものがある。例えば,
刑法においては,有期刑の上限の引き上げや窃盗罪への罰金刑の新
設を始め,犯罪情勢の変化等に対応した刑罰法規の整備や法定刑の
見直しが図られた上,2013年(平成25年)には,刑の一部の執行猶
予制度を導入する,刑法等の一部を改正する法律及び薬物使用等の
罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律が成立した
。交通犯罪に関しても,2013年(平成25年)には,自動車の運転に
より人を死傷させる行為等の処罰に関する法律が制定され,従来刑
法において規定されていた危険運転致死傷罪及び自動車運転過失致
死傷罪を,本法に規定するとともに,危険運転致死傷罪の新たな類
型を新設することにより,自動車の運転による死傷事件に対して,
世論に応えて,運転の悪質性や危険性等に応じた処罰ができるよう
にしている。
少年法制においても,2000年(平成12年)の平成少年法の制定以来
,2007年(平成19年)には,少年院収容可能年齢の引下げ等が,ま
た,2008年(平成20年)には,被害者等に審判の傍聴を許すことが
できる制度の導入等が,そしてまた,2014年(平成26年)には,不
定期刑の上限の引き上げ等の重要な制度改正が行われているのであ
る。また,犯罪情勢の悪化を受け,その対策を進めるために2003年
(平成15年)に設置された犯罪対策閣僚会議は,2008年(平成20年)
に犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」を,そして,20
12年(平成24年)には,再犯防止に向けた総合対策」を策定し,
刑務所出所者等の再犯防止における効果を的確に把握するために,
出所等年を含む2年間において刑務所等に再入所等する者の割合を
,過去5年間における2年以内再入率の平均値を基準とし,これを
2021年(平成33年)までに20%以上減少させることを目標としてい
る。さらにまた,2013年(平成25年)には,犯罪対策閣僚会議は
世界一安全な日本」創造戦略」を閣議決定し,2020年(平成32年)
開催のオリンピック・パラリンピック東京大会を視野に,新たな治
安上の脅威への対策を含め,官民一体となった的確な犯罪対策を展
開し,良好な治安を確保することにより,国民が安全で安心して暮
らせる国であることを実感できる世界一安全な国,日本」を創り
上げることを宣言しているのである。
このように,最近の刑事政策は,再犯防止を中心として,官民一体
となった犯罪対策の必要性が叫ばれており,まさに時代は,新しい
刑事政策の風が吹いていることが実感できるような状況にある。筆
者が全訂第七版を世に問うのは,こうした新しい刑事政策の動向を
踏まえた上でのテキストの必要性を肌身に感じているからであり,
微力ながら,安心・安全な社会の樹立に,何らかの貢献ができるの
ではないかと思うからである。

2015年3月19日
聖蹟桜ヶ丘の自宅にて 藤本 哲也


●執筆者
藤本 哲也:弁護士
中央大学名誉教授
常磐大学大学院被害者学研究科教授

■書籍内容
目 次

第1章 刑事政策の基礎
第1節 刑事政策の定義
1 刑事政策とは何か
2 犯罪学,刑事政策,刑事学
3 刑事政策の2つの意味
4 刑事政策の定義
第2節 刑事政策と隣接科学
1 はじめに
2 広義の犯罪学
3 事実学としての犯罪学と規範学としての刑法学
4 犯罪学 ・ 刑法学と政策学としての刑事政策学
5 被害者学と犯罪学
第3節 刑事政策と暗数の問題
1 犯罪統計の意義
2 官庁統計使用上の注意
3 犯罪統計と暗数
 (1) 本来の意味での暗数
 (2) 法執行機関が生み出す暗数
4 暗数調査
 (1) 犯罪者を対象とする暗数調査
 (2) 被害者を対象とする暗数調査
 (3) 第三者を対象とする暗数調査
5 まとめ
第4節 刑事政策の国際性と新しい動向
1 刑事政策の世界性と国際刑事政策
2 ヨーロッパ理事会の活動
3 国連最低基準規則
 (1) 国連犯罪防止刑事司法会議
 (2) 3つの重要な国連最低基準規則
 (3) 東京ルールズ採択の経緯について
 (4) 東京ルールズの内容
4 国際的なレベルでの刑事政策の必要性

第2章 犯罪原因論
第1節 犯罪原因としての素質と環境
1 鬼神論的犯罪学理論
2 内的要因 ・ 素質説
3 外的要因 ・ 環境説
4 犯罪家族の研究
5 一元的原因論と多元的原因論
6 犯罪原因論体系化への提言
第2節 精神医学的 ・ 生物学的原因論
1 ロンブローゾの生来性犯罪人説
2 ゴーリングのロンブローゾ批判
3 新ロンブローゾ学派の理論
 (1) 体質生物学的見解
 (2) 遺伝学的見解
 (3) 生物学的見解
4 ロンブローゾ学説の継承
5 まとめ
第3節 心理学的原因論
1 犯罪心理学の起源
2 フロイトの精神分析学的犯罪観
3 フロイトの後継者たち
 (1) アレクサンダーの神経症的犯罪者
 (2) アイヒホルンの潜在的非行性
 (3) フリードランダーの反社会的性格
4 精神分析学的犯罪学理論の諸学説
 (1) アドラーの劣等感説 (2) ユングの分析心理学
 (3) ライヒの衝動的性格理論
5 新フロイト学派とその後
6 まとめ
第4節 社会学的原因論
1 フェリと犯罪社会学
2 文化伝播を中心とする理論
 (1) 社会解体理論
 (2) 文化伝播理論
 (3) 異質的接触理論
 (4) 異質的同一化理論
3 文化葛藤を中心とする理論
 (1) 文化葛藤理論
 (2) 下層階級文化理論
4 社会構造に中心を置く理論
 (1) アノミー理論
 (2) 非行副次文化理論
 (3) 異質的機会理論
5 社会心理に中心を置く理論
 (1) 非行漂流理論
 (2) 非行中和技術理論
 (3) 潜在的価値理論
 (4) 自己観念理論
 (5) 牽制理論
6 社会的相互作用を中心とする理論
 (1) ラベリング理論
7 社会的実体を中心とする理論
 (1) ニュー ・ クリミノロジィの理論
 (2) クリティカル・クリミノロジィの理論
 (3) ラディカル・クリミノロジィの理論

第3章 刑事制裁一般に関する諸問題
第1節 刑罰制度の概観
1 刑罰制度の歴史的変遷
 (1) 社会現象としての刑罰
 (2) 刑事行政の時代的推移
 (3) まとめ
2 刑事法思想の展開
 (1) 啓蒙主義刑事法思想
 (2) 自由主義刑事法思想
 (3) 新派刑事法思想
第2節 死 刑
1 問題の所在
2 我が国の死刑制度の概観
3 死刑存廃論の理論的根拠
4 死刑に代わるべき制度
5 我が国における死刑執行延期制度
第3節 短期自由刑
1 問題の提起
2 「短期」の概念
 (1) 3か月説
 (2) 6か月説
 (3) 1年説
3 短期自由刑の弊害
4 短期自由刑の代替手段
5 まとめ
第4節 不定期刑
1 不定期刑の定義とその沿革
2 アメリカの不定期刑制度
3 我が国における不定期刑論争
4 不定期刑制度に対する賛否両論
5 少年犯罪者に対する不定期刑
6 常習犯罪者に対する不定期刑
7 まとめ
第5節 罰金刑
1 財産刑としての罰金刑
2 罰金刑の刑事政策的意義
3 我が国の罰金刑の実情
4 罰金刑の本質
5 罰金刑の長所と短所
6 罰金刑の諸問題
 (1) 罰金の執行猶予制度
(2) 罰金の延納と分納
 (3) 自由労働による償却
(4) 社会奉仕命令
 (5) 日数罰金制
第6節 猶予制度
1 我が国の猶予制度
2 微罪処分
3 起訴猶予
4 宣告猶予
5 執行猶予
6 仮釈放
7 恩赦
8 まとめ
第7節 保安処分
1 保安処分の意義と沿革
2 刑罰と保安処分の関係
3 保安処分の種類
4 我が国の刑法改正と保安処分
5 保安処分制度採用の是非
6 まとめ
第8節 保護処分
1 保護処分の概念
2 保護処分と保安処分の相違点
3 保護処分の種類
 (1) 保護観察
 (2) 児童自立支援施設 ・
  児童養護施設送致
 (3) 少年院送致
4 まとめ

第4章 犯罪者処遇の諸問題
第1節 犯罪者処遇の基本理念
1 はじめに
2 犯罪者処遇理念の重点の変遷
3 犯罪者処遇モデルの変遷
4 不定期刑の廃止と無害化政策の台頭
5 我が国の犯罪者処遇理念に関する議論状況
6 まとめ
第2節 施設内処遇制度
1 はじめに
2 累進処遇制度廃止への歩み
3 矯正処遇
4 矯正指導
5 まとめ
第3節 刑務作業
1 刑務作業の意義
2 刑務作業の目的
3 刑務作業の機能
4 刑務作業の現状
5 まとめ
第4節 受刑者の法的地位
1 問題の所在
2 受刑者収容関係の法的性格
3 受刑者の法的地位の基礎原理
4 受刑者の権利の制限とその限界
5 今後の課題
第5節 中間処遇制度
1 中間処遇制度の持つ意味
2 中間処遇制度の沿革
3 中間処遇制度の2形態
 (1) 開放的処遇
 (2) 外部通勤制度(作業)
 (3) 週末拘禁
 (4) 帰休制
 (5) ハーフウェイ ・ ハウス
 (6) 社会内処遇センター
4 まとめ
第6節 社会内処遇制度
1 伝統的社会内処遇制度と新しい社会内処遇制度
2 1975年以前の社会内処遇プログラム
3 1975年以降の社会内処遇プログラム
 (1) 電子監視システム
 (2) 在宅拘禁
 (3) 被害者 ・ 加害者和解プログラム
 (4) 被害弁償
 (5) 社会奉仕命令
4 まとめ
第7節 保護観察
1 保護観察の意義と種類
2 保護観察における処遇
3 保護観察の実施者としての保護司
4 保護観察の問題点
5 問題点の改善のための試み
 (1) 保護観察官の直接処遇に重点を置く施策
 (2) 処遇の多様化に重点を置く施策
6 保護観察の充実強化
第8節 更生保護
1 更生保護制度の成立過程
2 更生保護法の概要
 (1) 目的の明確化
 (2) 遵守事項の整理 ・ 充実
 (3) 官民の役割分担
 (4) 被害者に対する対応
 (5) 仮釈放等の審理の充実
3 更生保護法の課題
4 更生保護施設
5 更生保護の協力組織
 (1) BBS運動とその組織
 (2) 更生保護女性会
 (3) 協力雇用主の組織
6 まとめ

第5章 各種犯罪とその対策
第1節 少年非行
1 少年非行の概念
2 少年非行の推移
3 少年非行の要因
4 非行少年の処理手続
5 少年非行対策
第2節 来日外国人犯罪
1 来日外国人の犯罪の概観
2 来日外国人の犯罪の特徴
3 警察段階における問題点
4 裁判段階における問題点
5 矯正段階における問題点
6 更生保護における問題点
7 まとめ
第3節 女性犯罪
1 女性犯罪か女子犯罪か
2 我が国の女性犯罪の推移と特色
3 女性の犯罪性の研究
4 女性受刑者の処遇とその問題点
5 まとめ
第4節 交通犯罪
1 我が国の交通犯罪の現状
2 交通犯罪に対する刑事政策的対応
 (1) 交通裁判所の誕生
 (2) 交通切符制度
 (3) 交通反則通告制度
 (4) 重罰化路線の展開
 (5) 少年に対する施策
3 交通事犯受刑者の処遇
4 交通犯罪対策の新しい動向
5 まとめ
第5節 薬物犯罪
1 薬物犯罪とは
2 薬物犯罪の推移
3 最近の覚せい剤犯罪をめぐる問題点
4 覚せい剤事犯の激増の要因とその対策
5 覚せい剤事犯受刑者に対する処遇
6 麻薬二法
7 将来への展望
第6節 精神障害者の犯罪
1 問題の所在
2 精神障害者の定義
3 精神病と犯罪
4 知的障害と犯罪
5 精神病質と犯罪
6 精神障害者の犯罪と保安処分を科することの是非
7 精神保健福祉法と精神障害者施策
8 精神障害犯罪者の処遇
9 まとめ
第7節 暴力団犯罪
1 暴力団とは何か
2 戦後の暴力団の動向
 (1) 第1期
 (2) 第2期
 (3) 第3期
3 暴力団対策法の制定
4 暴力団犯罪の特徴
5 暴力団関係者の処遇
6 暴力団犯罪対策
第8節 常習犯罪
1 問題の所在
2 累犯と常習犯
3 我が国における累犯の実態
4 常習犯罪者対策
第9節 犯罪被害給付制度
1 はじめに
2 犯罪被害給付制度設立の背景
3 犯罪被害者補償制度の理論的根拠
4 犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律
5 犯罪被害者援助組織
6 まとめ

Copyright © SEIRIN SHOIN All Rights Reserved.