青林書院



判例からひも解く 実務民法


判例からひも解く 実務民法
 
編・著者近藤 昌昭 著
判 型A5判
ページ数328頁
税込価格4,400円(本体価格:4,000円)
発行年月2021年07月
ISBN978-4-417-01819-3
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■解説
民法(財産法)の主要な論点について,元裁判官が,判例の立場を中心として,
設例を用いて,詳しく解説!
 ●元裁判官による簡明な解説
 ●民法(財産法)の主要な論点について,判例の立場を基本として,論点相互
  の関連も解説しているので,実務における民法(財産法)全体の基本的構造
  を体得できる。
 ●判例を素材とした設例を通して,紛争の実像を捉え,どのような権利関係に
  あるのかを理解できる。
 ●現在の実務において採用されている要件事実についても解説。


はしがき
民法を含め私法の存在意義について,兼子一博士は「訴訟制度が,社会に起こる無数
の種々雑多な事件を取上げ,そのために多くの裁判官が分担して裁判をしなければな
らないことになれば,当然に裁判の公正と統一が要求されるし,又当事者の期待に副
う納得の行く合理的な判断が考慮されなければならなくなる。人民としても国家の法
廷へ持ち出せばどんな規準方針で裁判されるかが予想できないようでは安心してこれ
に頼れない。特に取引界では,取引上の紛争が画一的に確実に裁判されることが,予
め勘定に入れられることを強く要求する。このために国家として,明確な体系と網羅
的な内容をもった私法を制定することによって,訴訟制度の機能を合理的効果的に発
揮させようとするのである。したがって,私法法規は,元来実体法として,民事裁判
による紛争解決の基準として生成し又存在するものである。」(兼子一『實體法と訴
訟法―民事訴訟の基礎理論』(有斐閣,1957年)42頁)と述べている。民法の解釈に
あたっても,この裁判規範としての民法の実像を明らかにすることが必要である。そ
のために法曹実務家及び法曹を目指す者にとっては,最高裁判所の判例(その中でも
法理判決を中心として)を素材として,社会に生起する紛争の実像を捉え,その中で
どのような権利関係として位置づけているのかを理解することが重要である。最高裁
判所の判例をひも解いて,実体法の有権解釈について理解することは法曹実務家とし
て必須条件と言っても過言ではないといえよう。ただ,裁判例は具体的な事件を前提
として,その事件を解決する限りで判断することを前提としており,紛争の実像に迫
ることはできるものの,判例相互の関係を理解することは必ずしも容易ではない。
そのような判例の特色を意識して本書を作成している。本書の特徴をいくつか挙げる
と,本書はいわゆる民法の基本書ではない。したがって,各条文や制度をすべてカバ
ーしているものではなく,初めて民法を学ぼうとする者に適した本とはいえないであ
ろう。しかしながら,ある程度の民法の知識がある者や民法の基本書の理解を深めた
いと思っている者には,民法(財産法)の主要な部分に関して,判例の立場を基本と
して論点相互の関連にも意識して解説をしているので,実務における民法全体の基本
的構造を体得できると思われる。例えば,物権変動の対抗問題と94条2項との関係は
一連の問題であり,民法の体系書では,「民法総則」と「物権法」とで別々に記述さ
れているが,一緒に検討しておく必要がある。債権法の構造についても,特定物債権
,契約の解除,債務不履行,担保責任,危険負担の相互の関係も債権総論,契約総論
,契約各論で各別の検討では理解しづらい。これらについて全体構造を理解しやすい
ように,相互の関連について理解する必要がある。また,不法行為法と債権法との関
係についても意を用いたつもりである(どこまでが債権法の問題かを意識する必要が
ある。)。他方,そのような構成をとっている関係で,多くの民法の体系書の構造を
採用しておらず,また,判例の立場を中心として解説を加えているため,学説上の諸
見解の紹介はほとんどしておらず,全体構造を理解するうえで有益な場面に限定して
いる。そのようにすることによって,理解がむしろ簡明になると思われるからである。
さらに,民法の基本的な事項だけでなく,実務家にとって教科書等ではわかりづらい
論点についても,筆者が考える判例の立場で整理し,新たな整理を提示している部分
もある。この関係では,不法行為法における要件の整理として,新たな法益を認める
ことの利害得失,受忍限度論をどのように位置づけるか,不当利得返還請求権と189
条等の規定の関係,被相続人のために事務管理として支出をした場合に703条の法律
上の原因の問題として処理してよいかなど極めて実務的な問題についても触れてい
る。
民法は裁判規範であるので,要件事実的な整理も必要不可欠である。そのため,現在
の実務において採用されている要件事実についても説明を加えている。
また,民法以外の周辺の法的知識についても,それらの知識があることで民法自体の
理解が深まると思われるものについては,コラムで簡単な解説を加えることとしてい
る。
若い法曹実務家が民法(財産法)全体の理解を深めることが訴訟における争点整理を
促進させる原動力になると思われるが,そのために本書が少しでも役に立ち,民事裁
判の発展の一助となることを願っている。
最後に,本書の原稿整理から最終校正に至るまで,私のわがままを聞いていただき,
尽力していただいた青林書院編集部の長島晴美氏に対し謝意を表するものである。
令和3年6月
近藤 昌昭

■書籍内容
第1章 物  権
第1節 総  説
1 物権と債権との区別
2 物権的請求権
3 所有権に基づく返還請求権
1 占有権との関係
2 登記請求権との関係
3 中間省略登記
4 建物収去土地明渡請求における建物の登記名義等
4 交互侵奪の場合の処理
第2節 物権変動
1 総  説
1 不動産取引についての規律
2 不動産取引における登記の意義
2 不動産取引に関する94条2項類推適用との関係
1 94条2項の類推適用
2 類型的検討
⑴ 意思外形対応型  ⑵ 意思外形非対応型  ⑶ 外形他人作出型  ⑷ ま と め
3 物権変動(対抗問題)の具体的検討
1 意思表示の取消し
⑴ 第三者出現前の取消し  ⑵ 第三者出現後の取消し
⑶ 詐欺取消しの場合の第三者  ⑷ 法定解除
2 取得時効
⑴ 時効完成後に第三者に譲渡した場合  ⑵ 時効完成前に第三者に譲渡した場合
⑶ 時効に関する判例の整理  ⑷ 自主占有か他主占有か  ⑸ 占有の承継
3 相  続
⑴ 遺産分割協議後の第三者との関係  ⑵ 遺産分割協議前の第三者との関係
⑶ 「相続させる」旨の遺言の効力
⑷ 放  棄
4 建物収去土地明渡請求の建物の登記名義
⑴ 土地占有者と建物の登記名義   ⑵ 建物の登記名義が通謀虚偽表示の場合
5 所有権留保の自動車名義
第3節 第三者について
1 第三者の意義
2 悪意の第三者
1 第三者は悪意でもよいか
2 背信的悪意者について
3 背信的悪意者からの転得者
4 制限物権の譲受人の場合の第三者
3 その他の対抗問題
1 立  木
2 種  苗
第4節 動産の物権変動
1 動産の対抗要件
2 即時取得と占有改定等
1 即時取得と占有改定
2 即時取得と指図による占有移転
3 登録を要する動産
1 自 動 車
2 建設機械
第5節 そ の 他
1 共有者間の権利関係
1 概  説
2 具体的検討
2 占有に関する立証について

第2章 債権について
第1節 全体構造の理解
1 債務不履行・契約の解除・危険負担・担保責任の関係
1 契約解除・損害賠償請求
2 目的物の滅失の場合
⑴ 特定物の滅失と特定物引渡債務の関係及び債務者の帰責事由
⑵ 特定物の滅失と引渡債務の債権者の帰責事由
3 法定解除権行使の効果
⑴ 法定解除権の法的構成  ⑵ 法定解除の効果と使用利益
⑶ 債務不履行による損害賠償
4 ま と め
2 債権の広がりとその限界(不法行為との関係)について
1 債務の内容
2 安全配慮義務
3 説明義務について
⑴ 診療契約における説明義務  ⑵ 契約締結上の説明義務について
3 契約の成立(意思の不合致)と錯誤との関係
第2節 法律行為
1 意思表示
1 意思表示の意義
2 動機の錯誤について
⑴ 動機の錯誤の位置づけ  ⑵ 具体的検討
2 代 理 権
1 代理の位置づけ
2 権限濫用
⑴ 意  義  ⑵ 具体的事例の検討  ⑶ 親権者の事例
3 表見代理
1 白紙委任状による代理権授与表示
⑴ 問 題 点  ⑵ 白紙委任状の交付の趣旨  ⑶ 白紙委任状の交付と特定他人
2 109条2項(109条と110条との重畳適用)
3 110条の正当理由
⑴ 意  義  ⑵ 具体例の検討  ⑶ 正当事由の主張立証責任
4 日常家事債務と110条の適用
⑴ 761条は代理権を定めたものか  ⑵ 761条は110条の基本代理権となるか
4 無権代理と地位の相続
1 本人の無権代理人相続,無権代理人の本人相続(単独相続の場合)
2 無権代理人が本人を他の相続人とともに承継する場合
3 本人が無権代理人を他の相続人とともに承継する場合
第3節 契約各論
1 賃貸借契約
1 意  義
2 他人物賃貸借
⑴ 他人物賃貸借契約の法律関係について
3 目的物の譲渡(賃貸人の地位の移転の解釈)
4 賃貸人の地位の移転について
⑴ 合意による賃貸人の地位の移転  ⑵ 賃貸人の地位の移転に伴う法律関係
5 更新料について
6 賃貸人の修繕義務について
⑴ 設例⑴について  ⑵ 設例⑵について  ⑶ 設例⑶について
⑷ 設例⑷について
7 賃借人の用法義務違反
8 賃借権の譲渡・転貸について
⑴ 賃貸人の同意のない賃借権の譲渡・転貸について  ⑵ 適法な転貸の場合
9 賃料支払義務
10 信頼関係破壊の法理
⑴ 意  義  ⑵ 要件事実の整理
11 建物所有目的の借地契約における更新拒絶について
⑴ 借地借家法6条の正当事由  ⑵ 要件事実の整理
12 企業間の継続的契約について
⑴ 企業間の継続的契約の解消について  ⑵ サブリース契約
2 請負契約
1 意  義
2 建物建築請負契約
3 元請下請の関係
⑴ 問題の所在  ⑵ 元請契約に注文者帰属の合意がある場合
⑶ 元請契約に注文者帰属の合意がない場合
4 設計者と建築業者との関係
5 建物の基本的安全性
3 寄託契約
1 預金契約について
2 預金契約の契約当事者
⑴ 問 題 点  ⑵ 学  説  ⑶ 判例の考え方
3 誤 振 込
4 預金口座からの無断払戻し
⑴ 前提の確認  ⑵ 生前の200万円の引出しについて甲の承諾がない場合
⑶ 生前の200万円の引出しについて甲の承諾がある場合
5 甲死亡後引出しの場合
4 定型約款
1 定型約款に関する改正
2 約款の適用について
⑴ 問題提起  ⑵ 判例の紹介  ⑵ 既に支払った情報提供料について

第3章 債権を確保するための制度
第1節 総  論
第2節 保証債務
1 保証をめぐる問題
2 主債務の範囲
1 保証債務の中味
2 保証と時効
⑴ 主債務者が消滅時効の援用をしていた場合に保証人が債務を弁済したときの求償関係
⑵ 主債務の消滅時効完成後,主債務者が時効の援用をしていないときに保証人が支払っ
  た場合の求償関係
⑶ 事前求償権
第3節 抵 当 権
1 抵当権の有効性
2 抵当権の効力が及ぶ範囲
3 妨害排除請求権
4 法定地上権の成否
1 法定地上権の意義・成立要件
2 同時存在(要件,亡悗靴董
3 共有の場合(要件△亡悗靴董
⑴ 土地共有の場合  ⑵ 建物共有の場合
第4節 譲渡担保権
1 意  義
2 譲渡担保権の実行に関して
3 受戻権の行使
4 集合物譲渡担保
1 最高裁判所平成18年7月20日判決の事例
2 本件契約1は売買か譲渡担保か
3 集合物譲渡担保の実行についての問題点
4 集合物譲渡担保権の公示方法について
5 本件契約2の法的性質について
第5節 相  殺
1 相殺の機能・要件等
1 相殺の機能
2 基礎的な知識
2 508条の解釈
1 508条の趣旨
2 相殺の期待(差押えと各債権の弁済期の前後)
⑴ 相殺の期待(差押えの場合)  ⑵ 差押えによる処分禁止効との関係
⑶ 511条の解釈
3 相殺の期待(債権譲渡の場合)
1 債権譲渡の場合
2 相殺権の濫用について
第6節 債権譲渡
1 債権の譲渡性について
2 譲渡禁止債権
3 指名債権の対抗要件
1 債権譲渡の公示の構造
2 事例の検討(その1)
3 事例の検討(その2)
4 債務者の譲渡人に対する抗弁の対抗
1 「異義なき承諾」制度の改正
2 譲渡人に対する抗弁の対抗
5 要件事実的整理について
1 ⑴(債務者対抗要件)について
2 ⑵(第三者対抗要件)について
第7節 代理受領
1 意  義
2 判例の紹介

第4章 不法行為
第1節 一般的不法行為
1 要 件 論
1 総  論
2 要件事実について
⑴ 要件一般  ⑵ 違法性の要件  ⑶ 違法性と故意・過失
2 権利又は法律上保護される利益
1 相当程度の可能性
2 建物の基本的安全性
⑴ 「建物の基本的安全性」という法益  ⑵ 法益内容の検討
3 景観権ないし景観利益
4 パブリシティ権
⑴ パブリシティ権の承認  ⑵ パブリシティ権の内実
⑶ 不法行為の成否に関する判断基準
5 人 格 権
⑴ 肖像権について  ⑵ プライバシー権について
⑶ 忘れられる権利について
6 そ の 他
⑴ 弁護士法23条の2第2項に基づく照会に対する回答を受ける権利
⑵ 弁護士会の23条照会による事実調査権
3 被告の違法行為(違法性)
1 違法性一般
2 名誉毀損の違法性及び違法性阻却事由
⑴ 事実摘示型と意見論評型  ⑵ 要件事実について
3 プライバシー権
⑴ プライバシー権の意義  ⑵ 個人情報の流出
4 因果関係
1 因果関係の構造
2 ルンバール事件判決
3 診療契約における説明義務
5 故意過失
1 過失の構造
2 結果回避義務と予見義務との関係
6 責任能力
1 責任能力の意義
2 714条の「監督義務者」
⑴ 未成年者の責任能力  ⑵ 認知症患者が起こした事故についての検討
第2節 特殊不法行為
1 使用者責任
1 責任の根拠
2 要件事実
3 事業執行性
⑴ 「事業執行性」の2段構えの構造  ⑵ 「事業の執行について」
⑶ 事実的不法行為の場合
4 求償の問題
⑴ 使用者が被用者に求償する場合  ⑵ 被用者が使用者に対する求償する場合
2 共同不法行為
1 概  要
2 共同不法行為者の責任根拠
⑴ 主観的関連共同の概要  ⑵ 主観的関連共同の要件について
⑶ 同時的行為の共同について⑷ 異時的行為の共同について
3 客観的関連共同
⑴ 山王川事件  ⑵ 強い関連共同性と弱い関連共同性
4 不真正連帯債務と免除
第3節 損 害 論
1 総  論
2 人身損害の基本
1 はじめに
2 人が死亡したときの損害
⑴ 死亡による逸失利益  ⑵ 慰 謝 料  ⑶ 葬儀関係費用
⑷ 過失相殺  ⑸ 弁護士費用
⑹ 損 害 額
3 傷害の場合
⑴ 積極損害  ⑵ 消極損害
3 過失相殺
1 過失相殺の対象は被害者側の「過失」か
2 事実抗弁
3 故意行為に過失相殺することの是非
4 被害者側の過失
5 相当因果関係がある損害の減額事例
6 素因減額
4 損益相殺
1 総  説
2 労災保険給付金
3 遺族補償年金
⑴ 労災保険法の遺族補償年金と自賠責保険金  ⑵ 生命保険金及び火災保険金

第5章 不当利得
1 不当利得の考え方
2 703条と704条前段との関係
3 不当利得と物権的請求権等との関係
4 具体的検討
5 転用物訴権
1 転用物訴権の意義及び問題点
2 設例に関する新たな最高裁判例
3 転用物訴権の考え方(整理)
6 三者関係の給付不当利得
1 最高裁判例の内容
2 要件事実的整理
3 その他の具体例
7 騙取金の場合
1 因果関係の問題
2 法律上の原因のないことの問題

巻末資料
事項索引
判例索引
〔コラム〕
Column 要件事実コラム1
Column 要件事実コラム2 推定規定と立証責任
Column 「売買は賃貸借を破る」の法諺について
Column 担保責任の法的性質
Column 近代民法の原則と個人の意思
Column 授権及び信託
Column 手形法理(手形行為の捉え方)
Column 要件事実3
Column フランチャイズ契約
Column ファイナンスリース契約
Column ソフトウェア開発
Column 偽装請負
Column 民事執行手続について
Column ‌「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」の概要
Column プロバイダ責任制限法
Column 国家賠償法

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