青林書院



学校のいじめ対策と弁護士の実務


学校のいじめ対策と弁護士の実務
 
編・著者坂田仰・加藤慶子・川義郎・黒川雅子・神内聡・山田知代 編
判 型A5判
ページ数432頁
税込価格5,720円(本体価格:5,200円)
発行年月2022年05月
ISBN978-4-417-01836-0
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■解説
弁護士は学校のいじめ対策にどう臨むべきか!

●いじめ防止対策推進法・ガイドライン等に則った「いじめ対策」に必要不可欠な
知識を概説し,弁護士に求められる「学校現場の実情」に即した実務の進め方,
留意点,必要な知識等について具体的に解説。
●すべての[事例・解説]を学校法務の専門的知識を備えた弁護士及び研究者が協
同執筆。豊富な経験と英知が結集した待望の1冊!
「スクールロイヤー」「学校法務担当者」必携の1冊!

はしがき
 いじめ防止対策推進法の制定から9年近くが経過しました。しかし,「いじめ」は
,学校病理の1つとして,古くから存在していることに注意が必要です。少なくとも
1980年代以降,喫緊の課題として意識され,本格的な対策が講じられるようになって
いきます。ただ,そのほとんどは教育学的な視点からのアプローチでした。法的視点
に立った対応は皆無に近く,損害賠償の請求に関わって民法上の不法行為に関する規
定が,あるいは刑罰法規として恐喝罪や傷害罪等が,議論の対象になる程度だったと
いっても過言ではありません。
 いじめ防止対策推進法は,いじめが,いじめを受けた児童等の教育を受ける権利を
著しく侵害し,その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみなら
ず,その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであることに鑑み
,いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するため,いじめの防止等
のための対策に関し,基本理念を定め,国及び地方公共団体等の責務を明らかにし,
並びにいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針の策定について定めるとと
もに,いじめの防止等のための対策の基本となる事項を定めたものです(1条)。同
法の下,現在,全国の学校,教員がいじめの駆逐に向けて奮闘を続けています。
 ただ,学校,教員には,いじめ防止対策推進法に対する戸惑いがみられます。例え
ば,同法が定めるいじめの定義はその典型といえるでしょう。いじめられた側の主観
を重視する同法の定義には,いじめで苦しむ子どもをひとりも見逃さないという立法
者の“思い”が込められています。この“思い”に対しては,すべての教育関係者が
賛成することでしょう。しかし,この定義は,これまで学校現場が生徒指導上重視し
てきたいじめの区分,線引きとは一線を画すものです。これまで学校現場では,どち
らかというと加害者の行為に着目し,教育的観点からみてそれが受忍限度を超える場
合にはじめて指導の対象にするというスタンスをとってきたからです。
 その背景には,「学校には子ども同士のトラブルは付きもの。小さな衝突を繰り返
しながら,子どもは社会性を身に付けていく。」という,教育学に依拠する考え方が
存在しています。しかし,いじめ防止対策推進法は,この考え方を許しません。少な
くとも理論上は,どんな小さなできごとであったとしても,被害者が精神的苦痛を感
じたと主張したならば,いじめが成立することになってしまうからです。学校,教員
は,この教育学的思考といじめ防止対策推進法の規定の狭間で苦悩しています。
 本書は,苦悩する学校現場に向けたメッセージです。いじめ防止対策推進法の運用
をめぐり,学校現場で生じる疑問や衝突について,弁護士と研究者がタッグを組み,
事例に則して考えるというスタイルを採用しました。学校は様々な役割を担っていま
す。いじめ被害を受けている子どもへの支援を第一に考えつつ,多様な役割をどのよ
うに果たしていくべきなのか,学校,教員,そしてアドバイスを行う弁護士のバラン
ス感覚が問われる場面です。執筆者一同,本書において,そのためのヒント,道標を
提示できたらと願っています。
 本書の刊行にあたっては,青林書院の皆様にお世話になりました。出版事情の厳し
い中,快く出版を引き受けてくださった青林書院の皆様,特に遅れがちな編集作業を
根気よくサポートしてくれた森敦さんに深く感謝したいと思います。
 2022(令和4)年4月1日
編集委員を代表して 坂田 仰 


■編集代表
 坂田 仰:日本女子大学教授

■編集委員
 加藤慶子:弁護士(上原綜合法律事務所)
 川 義郎:弁護士(弁護士法人リレーション)
 黒川雅子:淑徳大学教授
 神内 聡:兵庫教育大学准教授・弁護士(本郷さくら総合法律事務所)
 山田知代:多摩大学准教授

■執筆者
 坂田 仰:上 掲
 小島優生:獨協大学教授
 鬼澤秀昌:弁護士(おにざわ法律事務所)
 大竹英理子:元帝京科学大学非常勤講師
 関 雅夫:弁護士(十日町みなと法律事務所)
 黒川雅子:上 掲
 山田知代:上 掲
 加藤慶子:上 掲
 百瀬明宏:秀明大学教育研究所所長
 小林 晃:学校専門指導員/日本女子大学教職教育開発センター客員研究員
 川 義郎:上 掲
 中西 茂:玉川大学教授
 三好仁司:元日本体育大学教授
 牧瀬翔麻:島根県立大学講師
 平田敦義:帝京科学大学准教授
 礒奈保子:弁護士(吉川総合法律事務所)
 高橋 望:群馬大学准教授
 五十嵐裕美子:弁護士(五十嵐綜合法律事務所)
 木村菜生子:弁護士(株式会社Hacobu)
 渡辺純一:弁護士(弁護士法人延岡総合法律事務所)
 朝妻理恵子:弁護士(リバティ法律事務所)
 岩堀 裕:弁護士(東京フィールド法律事務所)
 原口暁美:弁護士(本郷さくら総合法律事務所)
 小島秀一:弁護士(弁護士法人早稲田大学リーガルクリニック)
 石垣正純:弁護士(京葉船橋法律事務所)
 中野敬子:弁護士(常葉法律事務所)
 小久保真夕:弁護士(弁護士法人福澤法律事務所)
 坂本順子:弁護士(六田・坂本法律事務所)
 福盛章子:弁護士(そとだて総合法律事務所)
 小園恵介:弁護士(流山市教育委員会)
 小美野達之:弁護士(堺みくに法律事務所)
 神内 聡:上 掲
 島崎伸夫:弁護士(TF法律事務所)
 山雄一郎:弁護士(みとしろ法律事務所)
 牟田武史:弁護士(弁護士法人マイスタット法律事務所)
 水村佳和:弁護士(弁護士法人リレーション*原稿執筆時)
 時田剛志:弁護士(弁護士法人グリーンリーフ法律事務所)
 稲村晃伸:弁護士(北多摩いちょう法律事務所)
 杉本周平:弁護士(弁護士法人リレーション*原稿執筆時)
 戸田恵蔵:弁護士(銀座第一法律事務所)
 久保貴史:弁護士(弁護士法人リレーション)
 川口克巳:弁護士(川口法律事務所)
 堀切忠和:弁護士(九段富士見法律事務所)
(執筆順,肩書・所属は本書刊行時)


■書籍内容
第1章 総  論
いじめ防止対策推進法の浸透と課題

第2章 未然防止
Q1 教育活動‘仔繕軌
Q2 教育活動体験活動
Q3 弁護士によるいじめ防止授業
Q4 保護者との連携・啓発
Q5 地域住民との連携
Q6 その他の関係者との連携
Q7 児童生徒の自主的活動
Q8 自治体や教育委員会が担う組織的な対応策

第3章 早期発見
Q9 定期的な調査.▲鵐院璽板敢
Q10 定期的な調査個別面談
Q11 定期的な調査8魎好痢璽
Q12 教育委員会のいじめの通報相談窓口
Q13 学校内での相談体制
Q14 相談体制の運用上の留意事項
Q15 学校いじめ対策組織の役割
Q16 学校いじめ対策組織の構成員

第4章 いじめ初期対応
第1節 いじめの事実確認
Q17 いじめの定義と認定
Q18 一般的にはいじめと考えにくい行為で被害者が心身の苦痛を感じた場合
Q19 被害者が先に加害者に加害行為をしていた場合
Q20 加害者間に主従関係があり,従たる加害者が主たる加害者から脅かされていた場合
Q21 LINEでのいじめと調査
第2節 いじめ対策と法的義務
Q22 いじめ防止対策推進法23条で教員がしなければならない事実確認や調査の注意点
Q23 学級担任によるいじめ対応の注意点
Q24 養護教諭によるいじめ対応の注意点
Q25 スクールカウンセラーによるいじめ対応の注意点
第3節 様々ないじめ対応
Q26 部活動でのいじめ対応
Q27 被害者の保護者が学級担任やクラスの変更を要求した場合 
Q28 被害者の保護者が加害者の氏名や住所を教えるよう要求した場合
Q29 いじめが犯罪行為である場合と被害者が被害届を提出した場合
Q30 いじめと性犯罪
Q31 周囲の児童生徒への影響
Q32 保護者会の開催
第4節 いじめの加害者への対応
Q33 別室指導
Q34 加害者への指導と懲戒
Q35 加害者の停学・退学
Q36 加害者への出席停止措置
Q37 加害者が発達障害である場合
第5節 いじめ対応の諸課題
Q38 いじめ対応と労働時間
Q39 いじめ対応と「チームとしての学校」(情報共有と連携) 
Q40 いじめが「解消している」状態
Q41 アンケート情報などの文書管理・保管期間の問題

第5章 いじめ重大事態対応
第1節 重大事態認定
Q42 重大な被害が生じた疑いがある場合とは
Q43 重大な被害が生じた疑いがある場合とは
Q44 重大な被害が生じたとまではいえない場合の対応
Q45 28条1項2号により重大事態認定をすべき場合
第2節 重大事態に関わる調査
Q46 重大な被害が生じた場合の対応
Q47 本人が欠席しており,ヒアリングができない場合
Q48 欠席と「いじめ」との因果関係が希薄な場合
Q49 いじめ調査の留意点
Q50 重大事態認定をした場合の調査
第3節 保護者対応
Q51 被害児童生徒の保護者が調査を拒む場合の対応
Q52 保護者が重大事態認定を求める場合の対応
Q53 被害児童生徒及び保護者への情報提供
第4節 調査後に生じる問題
Q54 いじめ調査によりいじめの事実が認められない場合の対応 
Q55 設置者による支援
Q56 重大事態に係る調査結果を受けた地方公共団体の長による調査
Q57 再調査の要否の判断
第5節 私学・その他
Q58 私学における留意点
Q59 重大事態の調査結果の活用,公表,マスコミ対応

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