青林書院




新刊情報


紛争解決のための合意・和解条項作成の弁護士実務 裁判官の視点を加えて


紛争解決のための合意・和解条項作成の弁護士実務  裁判官の視点を加えて
編・著者滝澤 孝臣・大坪 和敏 編著
発行年月2017年07月
ISBN978-4-417-01716-5
税込価格4,428円(本体価格:4,100円)
在庫有り
  
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■解説
弁護士・裁判官が,適切な合意書・和解条項作成のための技術を提示。

弁護士が紛争類型別のよくある事案について合意書案を提示。

裁判官が訴状外の合意書の有用性を前提とし債務名義取得のための留意点を指摘。



編著者
滝澤 孝臣:弁護士(関口総合法律事務所)
      日本大学法科大学院教授

大坪 和敏:弁護士(馬場・澤田法律事務所)

執筆者
林 洸太朗:弁護士(関口総合法律事務所)
松井 雅典:福岡地方裁判所判事
野上 誠一:大阪地方裁判所判事
秋山 里絵:弁護士(馬場・澤田法律事務所)
荒井 章光:さいたま家庭裁判所川越支部判事
尾原 央典:弁護士(関口総合法律事務所)
吉野内 謙志:前橋地方・家庭裁判所桐生支部判事
町田 健一:弁護士(町田法律事務所)
矢作 和彦:弁護士(矢作・市村法律事務所)
光岡 弘志:最高裁判所調査官
五島 丈裕:弁護士(本郷綜合法律事務所)

(執筆・掲載順,肩書きは刊行当時)


はしがき
 本書は,本題に「合意・和解条項作成の弁護士実務」と配するほか,その頭部に
「紛争解決のための」と冠し,その脚部に「裁判官の視点を加えて」と付け足して
いる。その結果,書名としては,いささか長々しいものとなっているが,このよう
な書名にしたのは,以下のような理由からである。
 本書の刊行について青林書院の編集部から編集依頼を受けたのは,随分と前に遡
る。裁判所における和解あるいは調停をめぐっては,和解条項集ないし調停条項集
がこれまでに数多く刊行されているほか,そのうちには,実務書・実用書として汎
用されているものもないわけではない。民事紛争の解決のために裁判所における和
解あるいは調停が果たしている機能・役割に鑑みれば,的確で妥当な和解条項ない
し調停条項の作成は,当該紛争の当事者を代理する弁護士の立場からみても,また,
和解ないし調停の成立によって当該紛争の解決を図る裁判所(裁判官のほか,調停
委員を含む。)の立場からみても,その重要な職責であることは疑う余地がない。
 しかも,そこで要求されているのは,単なる和解条項ないし調停条項の記載例で
はない。その条項によって民事紛争それ自体を適正かつ公平に解決し得るものでな
くてはならないからである。また,そのためには,民事紛争の当事者の当該紛争に
至った不服ないし不満を解消し得るものでなくてはならないが,私的自治の原則が
支配する民事事件においては,そこから生ずる紛争についても,私的自治の結果に
よる解決がまずもって望まれるところである。裁判所における和解あるいは調停に
よる解決以前の,裁判前の紛争解決ということになるが,そのような裁判前の紛争
解決の機能・役割を直視すると,その紛争解決に当事者の代理人として関与する弁
護士の職責に注目せざるを得ない。
 ▼続きを読む

 

本書は,そのために「合意・和解条項作成の弁護士実務」を本題としてまとめる
ことにした。これまでの和解条項集ないし調停条項集として刊行された類書にも,
そのような視点がないわけではないとしても,本書は,この点に主眼を置くことで,
裁判前の紛争解決の重要性を明らかにし,そのためにどのような合意ないし和解が
望まれるかといったスキルを多少でも提供し得るのではないかと考えて刊行するも
のである。「和解・合意条項」といわず,「合意・和解条項」と順序を入れ替えて
いうのも,「作成の実務」といわず,「作成の弁護士実務」というのも,民事紛争
の解決のために弁護士がどのような合意を条項として作成すべきであるかに力点を
置く趣旨である。
 そのような本題に「紛争解決のための」と冠しているのも,そこに,多少でも裁
判所を離れた「訴訟外の」紛争解決といった本書の趣旨を表したいためである。
本題と続けて「紛争解決のための……条項作成の弁護士実務」と読んでいただける
と,編者のいう趣旨もより明確に理解していいただけるのではないかと思う次第で
ある。
 もっとも,そのような訴訟外,すなわち,裁判前の合意・和解であっても,これ
で民事紛争が最終的に解決されずに,その解決が裁判所に持ち込まれる事態も想定
しなくてはならない。その場合に注意しておく必要があるのは,裁判前の合意・和
解が裁判所における紛争解決にとってどのような意義を有するものであるかといっ
た点ではないかと思われる。本書で「裁判官の視点から」といった付け足しをして
いるのも,裁判前の紛争解決と裁判後の紛争解決とを関連づけて理解するには,裁
判所からみた訴訟外の合意の有用性を前提に,その問題点も指摘し,さらに,裁判
所における和解(調停)に至った場合に訴訟外の合意の変更を要する点,反対に,
変更を要しない点を指摘することで,翻って,裁判所を離れた「訴訟外」の合意の
重要性を認識し直すことができるのではないかと考えたためである。
 その意味で,本書は,弁護士と裁判官との協働の成果としてまとめられている。
訴訟外の合意の重要性を直視すればこそであるが,弁護士サイドで作成した合意・
和解条項を裁判官サイドで付加・訂正して,最終的な条項を読者に提供するといっ
た共同作業は試みられていない。そのような共同作業は,本書の以上のような趣旨
からして,かえって,馴染まないものと考えたからである。弁護士サイドて作成し
た合意・和解条項をそれ自体として完結したものとして提供するほか,これに裁判
官サイドからみた視点を付け足すことによって,本書の趣旨を全うすることができ
るという理解がそこにある。
 本書のそのような試みは,弁護士サイドの簡潔的であるが,適切かつ十分な事例
分析を踏まえた合意・和解条項の作成と,これを踏まえた裁判官サイドの訴訟外の
合意の有用性を前提にした問題点の指摘と相まって,いかんなく発揮されているの
ではないかと,編者として,多少の自負をしないわけではないが,その自負は,本
書の第2編を執筆された弁護士各位ないし裁判官各位の力量あってのことである。
改めて執筆者各位にこの場を借りてお礼を申し上げると同時に,本書の刊行に至る
まで編者に対し,さらに,執筆者に対し,時機を得た叱咤・激励を続けられた編集
部御中に深甚の感謝を寄せる次第である。
 本書が,類書の合い間にあって,多少でも民事紛争の適切かつ妥当な解決のため
にお役に立つところがあるとすれば,編者として,これ以上に嬉しいことはない。

  平成29年7月  本書の刊行に寄せて
編著者を代表して  滝澤 孝臣




労災保険・民事損害賠償 判例ハンドブック


労災保険・民事損害賠償 判例ハンドブック
編・著者太田 恒久・石井 妙子 編
発行年月2017年07月
ISBN978-4-417-01713-4
税込価格4,428円(本体価格:4,100円)
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■解説
◆紛争を予防し拡大を防ぐには? 安全配慮義務の具体的内容とは? 
 上司から部下への適切な指導とは?
◆52の最新重要判例を厳選! 
◆パワハラ・受動喫煙・災害への対応・損害額の算定当等


はしがき
 2017年(平成29年)は私どもの法律事務所の創設25周年である。
四半世紀を何とか無事に迎えることができそうだったので,所内
だけで何かしら行事的なことを催そうかと漠然と考えていた時に,
青林書院から本書の執筆依頼を頂いた。書籍の執筆であれば,日
頃実務処理に追われている我々の勉強にもなるし,周年行事の意
味合いを込めた記念にもなるしということで,物怪の幸いとばか
りにお受けした次第である。
 本書は,労災保険給付に関する判例・裁判例と民事損害賠償請
求訴訟に関するものとに大きく分けられるが,なるべく多岐にわ
たる論点に触れられるように判例・裁判例を取り上げたつもりで
ある。そのなかで弁護士がそれぞれ執筆したい分野を取り上げ,
各自の原稿を事務所内での議論を経てさらに加筆補正して書き上
げたものである。しかし,基本的には各弁護士の責任のもとでま
とめたものであるので,私どもの法律事務所としての統一的な見
解でないことはいうまでもない。
 労災保険の章(第1章)では,労働者災害補償保険法上の「支
給要件」を先ず検討し,さらに広く「業務起因性」についての判
例・裁判例について解説した。民事損害賠償請求訴訟の章(第2
章)では,労働契約関係における安全配慮義務を取り上げ,予見
可能性(結果回避義務),相当因果関係,損害論と整理した。
なお,2017年5月に可決成立した新民法による条項も必要のある
範囲で引用した。
 最後で恐縮であるが,本書の上梓にあたっては,青林書院編集
部の加藤朋子さんのほか,校閲にあたった多くの方に助けられた
ことに心から感謝申し上げる次第である。
  
 2017年6月
 編集者 太田 恒久
 同   石井 妙子


編集者・執筆者

【編集者・執筆者】
太田 恒久:弁護士(太田・石井法律事務所)
石井 妙子:弁護士(太田・石井法律事務所)
  
【執筆者】
深野 和男:弁護士
川端 小織:弁護士
伊藤 隆史:弁護士
西濱 康行:弁護士
石井 拓士:弁護士

❖太田・石井法律事務所❖
1992年(平成4年)3月開設。
主に使用者側の立場から労働事件に取り組んでおり,所属弁護士は全員経営法曹会議の会員である。
〒102−0082
東京都千代田区一番町13番地ラウンドクロス一番町6階
電話:03−5276−0080


個人情報保護法の法律相談


最新青林法律相談


個人情報保護法の法律相談
編・著者三宅 弘・小町谷 育子 著
発行年月2017年06月
ISBN978-4-417-01715-8
税込価格5,400円(本体価格:5,000円)
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■解説
●改正された個人情報保護法を1冊で早わかり!!
●匿名加工情報,要配慮個人情報,国境を超えるデータ提供,
 名簿業者に対する規制など の新設規定を詳述。既存の条文
 も丁寧に解説し,施行令・規則・ガイドラインを網羅。
●2015年改正法の全面施行に対応!


はしがき
個人情報の保護に関する法律の改正法(以下「個人情報保護法」
といいます)が,2017年5月30日に全面施行されました。2003年
に制定されて以降,初めての改正です。
 改正法の狙いの一つは,パーソナルデータの利活用の促進です。
個人情報の定義に個人識別符号を新設し,個人情報に該当するか
否かを明確化するとともに,特定の個人の識別を低減した匿名加
工情報という新しい類型を設けて個人情報から除外することによ
り,グレーゾーンをなくすことが意図されています。
 ▼続きを読む

 

もっとも,個人情報保護法の目的は,本人の権利利益の保護が主目
的であることに変わりはありません。改正法は,要配慮個人情報と
いうカテゴリーを設け,その利活用に制限を加えています。名簿業
者等による不正な第三者提供を抑止するために,確認及び記録の作
成・保存の規定や個人情報データベース等不正提供罪も新設されま
した。解釈上誤解が生じていた開示・訂正・利用停止については,
個人の請求権であることが文言上明示されました。本人の権利利益
の保護に関わる相応の改正もなされています。 
 また,改正法は,個人情報保護法の執行体制を強化しました。マ
イナンバーを監督する特定個人情報保護委員会が改組され,独立の
第三者機関である個人情報保護委員会が誕生し,個人情報取扱事業
者による個人情報等の取扱いの監督は,主務大臣から同委員会に移
りました。従来,他国にあるようなプライバシーや個人情報を保護
する専門機関が,日本に存在しないことが問題になっていましたが
体制が整いました。今後は,新たに設置されたこの個人情報保護委
員会がその権限を十全に発揮し,本来の役割を果たしているか否か
を注視する必要があります。なお,民間事業者の自主性を尊重する
個人情報の保護の枠組みに変更はなく,認定個人情報保護団体はこ
れまで以上の役割を担うことを期待されています。
 さらに,改正法は,国際的な動向との整合性にも配慮をしていま
す。一定の外国の事業者に個人情報保護法を適用し,併せて外国の
第三者に対する個人データの提供が制限されました。個人情報保護
委員会が外国の執行機関と協力する規定も設けられています。上述
した各種の条文を含め,全体的に個人情報保護の水準を国際的なも
のへと引き上げる意向が見られます。改正法が,全体として国際的
な水準を満たしているか否か,とりわけEUの個人データ保護法制と
合致するか否かの検証は,今後の実務に委ねられることになります。
 本書は,以上の改正法の解説に焦点を置きつつも,改正前から存
在する既存の条項についても丁寧に記述しました。施行令,規則及
びガイドラインもできる限り網羅しています。改正前には,個人情
報保護法の適用から除外されていた小規模事業者が,本格的な個人
情報保護の対策を講じるための手引きとなれば幸いです。
 本書には,『個人情報保護法 逐条分析と展望』(青林書院,
2003年)の逐条解説(小町谷執筆部分)の一部を再掲し,改正法に
応じて加筆し執筆している箇所があります。新しい本に生まれ変わ
る中で,法律相談シリーズに仲間入りさせていただく形になりまし
た。
 改正法の施行後に生じる課題や解釈上の問題点などについては
,改訂の機会があれば加筆していく予定でおります。
 最後に,出版事情の厳しい中,本書の刊行に向けてご尽力いた
だいた青林書院編集部の森敦氏に厚く御礼申し上げます。
 2017年6月
 三宅 弘・小町谷育子


著者紹介
三宅  弘:弁護士・獨協大学特任教授
小町谷 育子:弁護士・ニューヨーク州弁護士



ケースから読み解く少年事件 -実務の技-


ケースから読み解く少年事件 -実務の技-
編・著者河原 俊也 編著
発行年月2017年06月
ISBN978-4-417-01714-1
税込価格4,536円(本体価格:4,200円)
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■解説
◎裁判官の視点から!
 
現在の少年事件実務家の知恵と技法!
◆少年事件担当の裁判官や調査官、少年矯正・保護担当者が執筆!
◆ひとつのストーリーを軸とした解説!
◆調査官はどのような点に留意して調査をするのか? 裁判官はどの
 ような事実を重視し て事実を認定し処遇を選択するのか? 少年
 矯正・保護担当者はどのような教育的働き 掛けを行い、少年を更
 生するのか?・・・
 外からは見えにくい少年事件の実際と実情を分かりやすく詳解!


はしがき
1 現に少年事件を担当している裁判官らによる事件処理の知恵,技
 本書の特色を一つだけ言うとすれば上記に尽きる。少年法については,
 文献略語に掲げたものなど,優れた体系書や注釈書のほか,手続の流
 れに沿った解説書も多数公刊されている。しかし,本書は,執筆者で
 ある裁判官や家庭裁判所調査官が,いずれも大規模ないし中規模の家
 庭裁判所において現に少年事件を担当している者ばかりである点に特
 色がある内容を見ても,特段目新しいものはないかもしれないが,現
 時点での標準的な少年事件処理に関する実務の知恵なり技を示すこと
 ができたと自負している。「私が何も新しいことを言わなかったなど
 と,言ってほしくない。素材の配置が新しいではないか。ジュ・ド・
 ポーム(注:テニスの前身となった球技)をするときは,両方のプレ
 イヤーとも同じ球を使うが,一方がよりよい場所に球を打つ。」
 (パスカル『パンセ(中)』塩川徹也訳(岩波書店,2015)395頁)
 とまで言うのは言い過ぎだろうか。ともあれ,初めて少年事件を担当
 する裁判官,弁護士,あるいは少年法を勉強する法科大学院生などに
 とって,少年事件の実務ひいては少年法を理解する際の手掛かりにな
 れば幸いである。もちろん,少年事件を相応に経験,研究されている
 方も利用していただければ,編集者としてこれ以上の喜びはない。
 ▼続きを読む

 


2 ケースを基にした解説
  本書では,少年事件手続の一般的な解説に加えて,ケースの事件
 (特殊詐欺の現金受取役をした年長少年〔さしたる前歴を有しない。〕
 が詐欺の故意を否認するという,事実認定上も処遇選択上も相応に悩
 ましい事件である。最近比較的多く見られる。)が家庭裁判所に係属
 した後,調査官はどのような点に留意して調査するのか,裁判官はど
 のような事実を重視して事実を認定し,処遇を選択するのかという点
 にも重きを置いて解説している。また,家庭裁判所での審判後,少年
 院,保護観察での教育的措置などを受けながら,非行少年が健全な人
 間に戻っていく過程についても,少年矯正,少年保護担当者による解
 説を掲載している。すなわち,ケースのA少年が非行に及んだ後,家
 庭裁判所での調査,審判,少年院での矯正教育,そして保護観察とい
 う手続の流れでどのように更生していくのかを示している。架空の事
 例とはいえ,一つのストーリーを軸として解説することを通じて,読
 者が具体的なイメージの下,少年事件の実務を理解できるよう工夫し
 たつもりである。さらに,ケース以外でも実務上よくある事件,ある
 いは被害者配慮に関する事項については,別に項目を分けて解説した
 (ただし,在宅事件やぐ犯事件などについては,頁数の制約もあって
 十分に解説することができなかった。)。
 なお,ケースは,少年事件に携わる裁判官らの具体的な思考過程が考
 察できるように,実際の事例を念頭に置きながらも,大幅に脚色,編
 集し,かつ,リアルにしてある。当然,全て架空であることをお断り
 しておきたい。また,解説中,意見にわたる部分は執筆者の私見であ
 る。

3 「知の技法」はしがきから
  平成6年,『知の技法 東京大学教養学部「基礎演習」テキスト』
 が刊行され(小林康夫=船曳建夫編,東京大学出版会),この種の本
 にしてはベストセラーになった。この本のはしがきに以下のとおりの
 記述がある。この本の編集の理念は,むしろ「賞味期間」がせいぜい
 数年であるようなフレッシュな考え方とトピックを集めることにあり
 ました。固定的なスタンダードの確立を目標にしたのではなく(略)
 現在の知の在り方を正直に反映するものであることが企画されていま
 す。技術も技法も時代とともに変化するもので(略)あるからです。
  現在の少年事件処理の「技法」を集めた本書の編集理念についても,
 同じことを述べたい。少年法を始めとする本書で解説されている法律
 については,近時,立法の動きが激しく,今後もその動きが続くと予
 想される。そうであるとするならば,法改正やその背後にある国民の
 意識の変化などにつれて,本書で解説されている実務の在り方も変化
 していかざるを得ない。『知の技法』が平成10年に『新・知の技法』
 としてヴァージョンアップされたのに倣って,本書もいずれ改訂され
 ることを期待している。
  本書の作成に当たって,青林書院編集部の長島晴美さん,前任者の
 高橋広範さんには大変お世話になった。また,執務ご多忙の中,短期
 間で迅速に素晴らしい解説を作成していただいた執筆者の皆様にも心
 から感謝申し上げたい。

  平成29年6月
  河原 俊也


編著者
河原 俊也:横浜家庭裁判所少年部部総括判事

執筆者
藤根 桃世:名古屋法務局訟務部付
西田 俊男:前横浜家庭裁判所総括主任家庭裁判所調査官
奥田 哲也:奈良地方・家庭裁判所葛飾支部支部長判事
河畑  勇:東京家庭裁判所少年部判事
伊藤 敏孝:さいたま家庭裁判所少年部部総括判事
池上  弘:静岡家庭裁判所判事補
加藤  学:千葉家庭裁判所少年部部総括判事
等々力 伸司:長野少年鑑別所長
藤原 尚子:法務省矯正局少年矯正課補佐官
押切 久遠:水戸保護観察所長

(執筆・掲載順,肩書きは刊行当時)



時代と学問と人間と-追想のなかの恩師・知友たち


時代と学問と人間と-追想のなかの恩師・知友たち
編・著者樋口 陽一 著
発行年月2017年05月
ISBN978-4-417-01711-0
税込価格2,700円(本体価格:2,500円)
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■解説
自己形成の道ゆきでの導き人との出会い。
憲法学者が回想する故人の群像。

まえがき
恩師・知友とのこの世のお別れに際し、あるいはそれらの方々との出会いを
あらためて回想して感謝の思いと感慨を文章にしたものをまとめて、この本に
しました。多くは求められて話をし、あるいは書く機会があったからのもので
すが、幾つかの新稿もあります。例外的に、お元気であったころの慶事によせ
て書いたものをも加えました。それぞれの機縁に由ってのことですから、長い
短いはさまざまです。▼続きを読む

 

あらためて読み返してみて、大学卒業から数えただけでも六〇年の間、いかに
多くのご恩を頂いてともかくも現在の自分自身があり得ているのか、痛く身に
沁みています。それにひきかえ私が己れの身の廻りの人びとに少しでも意味あ
る何かをすることができているのか、ただ愧じ入るばかりです。せめて、それ
も分に過ぎるとはいえ、能のワキ僧の役柄になってシテ役の先人たちを呼び出
し、次の世代と対話してもらえないだろうか――。それが、『時代と学問と人
間と』という題名に託した私の思いです。それぞれの文章が書かれたその時の
「時代」といま現在の「時代」との激しい変りようのことを含めて、読みとっ
て下されば幸です。この本の章建ての区別に、特別の意味はありません。書物
としての体裁と、目を通して下さる読者の便宜を思ったからのものです。実際、
それぞれの章に付けた見出しからすると、いくつかの章にまたがって出てきて
頂きたいシテ役者は少数の方に限りません。とは言え、大づかみの流れからす
るとある程度、私自身の歳を追っての生活経歴に対応する順序にもなっている
ようです。
 仙台で生まれ、育ち、二〇歳代での外国留学を除いて四〇歳半ばまでをそこ
で過した私にとって、仙台は、言ってみれば私に養分をたっぷりと提供してく
れる腐葉土でした。第犠呂砲弔韻震勝宗宗崟臑罅宗宗區祐屐咾箸僚于颪い了
まり」――は、そうした思いを反映しています。第蕎楼焚爾砲出を願う方々
も、実はその大部分は仙台ゆかりの方々なのです。
第蕎呂痢岾慳笋旅發澆魍栖峺る」という表題は、研究者としての修業時代、
一本立ちしてからもまだ若かった頃、「垣間見る」が実感だったことを反映し
ています。フランス留学(第珪蓮砲鬚呂気鵑蚤茘絃楼焚爾砲覆蠅泙垢函△茲
麓に近づいて、さらには山道をのぼりながら、「高み」に近間で接することに
なる、と言ったらよいかもしれません。第珪呂痢屮侫薀鵐垢鯆未靴得こΔ砲
ながる」も、私には実感そのものです。そして、そのような進路をあゆむ私を
留学の前後から一貫して後押しして下さってきた小田滋先生を、九〇歳を過ぎ
られた今も折々にお訪ねすることができているのは、深いよろこびです。
「歴史家たちとの出会い」(第絃蓮砲蓮△佞衒屬辰胴佑┐討澆泙垢函∪の氷
志郎先生を中心にするM・ヴェーバー読書会に一〇年の間加わることができた
という前提あってのことでした。ヴェーバー、そしてマルクスへの関心という
下敷の上での組み立てであればこそ、歴史学の素人がともかくも歴史家たちと
「出会う」ことができたのではなかったでしょうか。第江蓮嵎法としての歴
史と法律学」は、歴史を学問上の認識対象とすることの訓練と法律技術の熟達
という、私自身にとっては遠く及ばないことですが、二刀流を磨くことの意味
にかかわって名づけました。第詐呂梁蠅砲蓮∋笋寮豺曲野の中でも多様な憲
法学に、そして隣接他分野の法学に接することによって得た学恩への感謝と、
日本国憲法の理念に沿った社会のあり方に近づくために尽された力への敬意と
がこめられています。
 私の主著のひとつ『比較憲法』(初版一九七七、全訂第三版一九九二)の発
行元・青林書院からこの本を出すことができ、感慨深いものがあります。何よ
り、長年にわたりおつき合い下さっていた先代社長、故・逸見俊吾さん(本文
四三頁以下)との思い出をこのような形にのこすことができたことを、うれし
く思います。最後になったが、現社長の慎一さん、今回の本づくりを入念にお
世話頂いた編集部の宮根茂樹さんに、有難うを申し上げます。
 二〇一七年春
 樋口 陽一

 ※いくつかの項目の終りに、「*なお――」という形での書き添えがある。
その項目でとりあげた方に関して私が書いたものが他にある場合(対談の形の
ものを含む)、それが複数のときは一件だけであるが記しておいた次第である。


■著者
樋口 陽一
東北大学,東京大学,上智大学,早稲田大学の
法学部教授として憲法・比較憲法を担当,パリ
第2大学,フリブール大学(スイス),コレー
ジュ・ド・フランス(パリ)などで客員教授,
招聘教授を歴任.現在 日本学士院会員.


実務に学ぶ執行訴訟の論点


実務に学ぶ執行訴訟の論点
編・著者滝澤 孝臣 編著
発行年月2017年05月
ISBN978-4-417-01712-7
税込価格4,860円(本体価格:4,500円)
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■解説
裁判官が幅広い実務経験に基づき平易に解説!

●執行事件の基本を確認し、数多くの裁判例から確定された権利・義務
 の実現を強制する民事執行手続の特殊性と生きた実務を学ぶための必読書!
●実務に学ぶシリーズ第3弾!


はしがき
本書は,青林書院から刊行中の「実務に学ぶ」シリーズの第1陣の「民事
訴訟の論点」,第2陣の「倒産訴訟の論点」に続く,その第3陣である。
第1陣の「民事訴訟の論点」を民事裁判一般の論点を実務に即して概説した
総論的な1冊であるとすると,第2陣の「倒産訴訟の論点」は,民事裁判の
うち,倒産手続を対象として,その裁判の論点を実務に即して概説した各論
的な1冊であるが,さらに,民事裁判のうち,倒産手続以外の手続を対象と
して,その裁判の論点を実務に即して概説する各論的な数冊の上梓も予定さ
れている。本書は,そのような各論的な数冊のうちでは,倒産訴訟の論点に
続く,その第2陣ということになる。▼続きを読む

なお,本書は,「倒産訴訟の論点」
が倒産手続を倒産訴訟と概括していたのと同様に,執行手続を執行訴訟と概
括して,「執行訴訟の論点」と題しているが,執行訴訟というと,その対象
が民事執行手続に関係した「訴訟」に限定されているかのように誤解されか
ねない。しかし,民事執行手続において,その裁判の基盤となっているのは,
訴訟手続における「判決」ではなく,非訟手続における「決定」である。
民事執行手続は,訴訟手続に係る判決その他の債務名義を取得する手続によ
って確定された権利・義務を前提に,その実現を強制する手続にとどまるか
らであるが,そのような非訟手続を基本とする民事執行手続を訴訟と概括す
るのは必ずしも適切ではない。しかし,本書を含む「実務に学ぶ」シリーズ
は,民事事件に係る裁判を対象として,その実務を理解するためには,同事
件に係る手続を全体的に俯瞰し,その一部を個々的に対象として,その論点
を理解するのが有益で,かつ,有用ではないかと考えて企画されたものであ
って,「○○訴訟の論点」と統一的に題して刊行したいという編者の思惑も
あったため,便宜,「執行訴訟の論点」と題することになった次第である。
読者各位におかれてはこの点に誤解されないようご注意をお願いしたい。
 さて,そのような実務に学ぶシリーズの1冊として「執行訴訟の論点」を
刊行する意義ないし趣旨について述べると,第1陣の民事訴訟の論点のはし
がきに記載し,第2陣の倒産訴訟の論点のはしがきに引用したところの繰り
返しになって憚れるが,要するに,「初心者に向けた実務書」の提供という
ことにある。そこには,「初心者」を読者として予定する以上,本書の対象
とする民事執行手続に係る裁判を「分かり易く概説する必要」と,「実務書」
という以上,民事執行手続に係る裁判を「専門的に理解し得るように概説す
る必要」といった矛盾めいた要請があるが,筆者なりに理解するところでは,
初心者といっても,「裁判を知る」という以上は,「実務を分かる」という
ことが不可欠であるところ,裁判を知るためには,その根底にある「理論を
知る」必要があるのであって,実務家にとって,理論は,これに依拠すれば
足りるというものではなく,これを自らの考えとして克服しなければならな
い課題として,その経験の多寡に関係なく,重くのしかかっているはずであ
る。理論を知るためには,克服すべきハードルは高いが,実務家になる以上
は,克服して当然であって,実務は,これを前提としてはじめて成り立ち得
るものであると考えると,初心の実務家においても,理論を知った上で,実
務を分かることが裁判を知るスタートということになるはずである。本書を,
そのような実務に学ぶシリーズの1冊として,ここに刊行する意義ないし趣
旨もご理解いただけるのではないかと考える次第である。
 なお,本書の各テーマの記述に際しては,以上のような意義ないし趣旨を
できる限り反映したいという意向から,執筆者各位に,内容的には,各自の
蓄積されているところを存分にまとめて貰うことをお願いすると同時に,形
式的には,そのまとめに支障とならない範囲で,第1に,「○○について学
ぶのはどうしてか」,第2に,「○○について問題となるのはどのような点
か」,第3に,「○○について実務はどう取り扱っているか」,第4に,
「○○について注意しておくのはどのような点か」といったスタイルで統一
してまとめていただけるようにお願いした。そのようなスタイルで記述する
のに適しているテーマと,必ずしもそうでないテーマとがあるが,そのよう
にスタイルを一貫することで,読者各位に実務を体得する機会になって貰え
るのではないかと考えたからである。本書が,これまでの「民事訴訟の論点
」,「倒産訴訟の論点」に引き続き,多少でも読者各位が民事執行手続に係
る裁判の実務,すなわち,執行訴訟の実務が分かる手掛かりとなったとすれ
ば,改めて理論書を紐解かれて,執行訴訟の理論の再認識に努めていただき
たい。
 最後に,本書は,初心者向けを標榜してはいるが,文字通りの初心者に限
定したものではない。否,実務に精通した熟練者についても,初心に立ち返
るといった気持ちを忘れていない熟練者については,以上のような本企画な
いし本書の記述は,問題の基本を確認し直す,あるいは,再認識するといっ
た意味で,少なからずお役に立つのではないかと自負しないわけではない。
それがまた,本企画の原点でもあるからである。本書を紐解く読者各位に,
そのような視点からも,本書を利用していただけると,編者にとって,嬉し
い限りである。
 最初の民事訴訟の論点の刊行(平成24年8月)から次の倒産訴訟の論点の
刊行(平成26年11月)まで,2年3月が経過し,それから本書の刊行(平成
29年5月)まで,さらに2年6月が経過してしまった。執筆者各位にはご無
理をお願いして執筆していただいていたのに,本書の刊行が遅れてしまった
のは,偏に,多忙を口実に怠惰を貪った編者の責任である。ここにお詫びと
ご了解を乞う次第であるが,それにもかかわらず,ここに本書を刊行するこ
とができたのは,青林書院の編集部の辛抱強い我慢の賜物である。感謝の言
葉が尽きないが,それだけに,本書を含む実務に学ぶシリーズに寄せる編集
部のご理解とご支援を肝に銘じ,本シリーズの全体を構想し,本書を編集さ
せていただいた者として,本シリーズの完結に向けて最大限の努力を注ぎ,
本シリーズをご利用していただいている読者各位の更なる参考に供したいと
心を新たにしているところである。
  
平成29年5月 本書の刊行に気持を新たにして
編者  
滝澤 孝臣


編集者
滝澤 孝臣(弁護士・日本大学法科大学院教授)  
  
執筆者
滝澤 孝臣(同上)               
光岡 弘志(最高裁判所調査官)         
樋口 正樹(宇都宮家庭・地方・簡易裁判所判事) 
天野 研司(東京地方裁判所判事)        
松井 雅典(福岡地方裁判所判事)        
宮崎 拓也(法務省訟務局付)          
畠山  新(東京高等裁判所判事)        
藤倉 徹也(東京地方裁判所判事)        
葛西 功洋(福島地方・家庭裁判所いわき支部判事)
内藤 和道(福島地方裁判所判事)        
  
(執筆順,所属・肩書は本書発行時)






所有者不明の土地取得の手引 -売買・相続・登記手続


所有者不明の土地取得の手引 -売買・相続・登記手続
編・著者東京弁護士会法友会 [編]
発行年月2017年04月
ISBN978-4-417-01709-7
税込価格4,320円(本体価格:4,000円)
在庫有り
  
在庫があります

■解説
今、一番ご好評をいただいています!

●全国に点在する所有者不明土地。その取得手続上の諸問題につき,
 相続,売買,登記,税務等の実務上の論点を整理した手引の決定版!
●取得したい土地の所有者の相続人が多数の場合や相続人の中に外国
 人がいる場合の対策についても解説!
●対象土地の確認・調査から取得までの手続と実務を整理!
●相続,売買,登記手続等の実務に役立つ書式・参考資料が充実!(68点 )


発刊にあたって
 法友会は,東京弁護士会所属の弁護士によって構成された任意団体
(会員数約2700名)であり,会員の研修や相互親睦,司法制度の調査
・研究,さらには市民のための司法を実現すべく様々な政策提言等の
活動に取り組んでいます。
 平成23年3月11日に東日本大震災が起き,被害の大きさが甚大なる
ものであることから,法友会では翌4月に東日本大震災復興支援特別
委員会を設置し,被災者・被災地の支援に取り組んできました。岩手
県,宮城県,福島県の被災地を今日まで14回にわたって訪問し,仮設
住宅住まいの皆様と懇談し,復旧・復興に取り組む自治体職員,被災
者の支援に取り組む社会福祉協議会の職員,NPOの代表者等との意見交
換を毎回行い,仮設商店街を訪れるなど,被災者や被災地の置かれ
た実情を認識して,立法提言に結びつけてきました。
 ▼続きを読む


そうしたなか,平成28年4月に熊本地震が起き大きな被害が発生し
ました。東日本大震災における活動の経験を活かして,熊本地震によ
る被災からの復旧・復興のための提言も行いました。
 これまでの被災地支援の取り組みのなかで,防災集団移転用地の取
得にあたって所有者不明の土地を避けて用地を取得せざるを得なかっ
たなどの事例の存在を知り,かつ,自治体の職員の中には災害時にお
いては用地取得のための詳細な知識を身につける前にその職務を担当
しなければならない場面があるとの声を聞き,この「所有者不明の土
地取得の手引―売買・相続・登記手続」の編纂チームを作り,調査・
執筆にあたりました。
 本書は,被災地にとどまらず全国至るところにみられる土地所有者
の確定と土地取得をめぐる問題について検討したものです。全国の自
治体職員のみならず弁護士等土地取得にかかわる方々において利用し
ていただくことを目的としたものであり,広くご活用いただきたくこ
とを願っております。
 最後に,調査・執筆をした若手弁護士,執筆に加え編集を行った中
堅とベテランの弁護士に仙台高裁長官を務められた田中康久弁護士が
加わって本書をまとめました。多忙な中,編集・執筆にあたられた各
位に深く感謝いたします。
  
  平成29年3月
東京弁護士会 法友会 
平成28年度 幹事長 伊井 和彦 


推薦の辞
このたび,東京弁護士会に所属する弁護士の団体である法友会によっ
て『所有者不明の土地取得の手引―売買・相続・登記手続』が上梓さ
れることになりました。
 東日本大震災や熊本地震による被災地においては,移転先の用地の
取得や被災地一帯の復興の際に,土地の所有者の確定が難しい事案が
少なからずあったとのことです。また,登記簿上の名義人が古くに亡
くなっており,相続人を調査してみると,相続人が多数になり相続登
記手続がままならない事案,相続人のなかに所在が不明な方がいる事
案などがあって,用地の取得を断念した例もあったとのことです。
 上記の土地取得の際の問題は被災地に限ったことではありません。
全国各地においてみられます。そして,外国籍の方が相続の当事者に
なられる例が増えています。したがって,土地を取得しようとする際
には,我が国の相続法の変遷に関する知識,所有者の調査方法,登記
に関する知識,渉外相続に関する知識が必要となっています。
 本書は任意で土地を取得する際の様々な問題を検討し,土地売買と
いう典型的な土地取得の場面において,地方自治体の職員,弁護士,
その他土地取得に関わる方に必ずお役に立つものと確信します。
 東京弁護士会は,被災者・被災地の支援に取り組むだけでなく,市
民の皆様に寄り添い,法的サービスを拡充して,その期待に応えるべ
く活動を行っているところです。そのためにも,弁護士各位が,質の
高い法的サービスと市民のニーズの的確な把握にたゆまない努力と研
鑽が必要であることは申し上げるまでもありません。本書は,土地取
得をめぐる実務においてその一助となることを期待し,また,所有者
不明の土地の解消が求められている現在において発刊されたことは誠
に時宜を得たものと存じます。
 最後に,本書が,弁護士のみならず多くの実務家に広く活用され,
スムーズな土地取得に役立てられることを祈念し,推薦の言葉といた
します。
  
  平成29年3月  
東京弁護士会 会長 小林 元治


はしがき
 東日本大震災によって自宅を喪失した住民の方々は避難所生活を送
り,その後仮設住宅が公立学校のグランドや公園等の公共用地に設置
・用意ができ次第に仮設住宅に移り住まれている。その後,被災地で
は,津波被害に2度と遭遇しないために防災集団移転促進事業の一環
として,地盤の嵩上げ,高いところでの住宅地造成,高層住宅の建設,
道路・鉄道の築替工事等の復興作業が精力的に行われている。震災発
生から丸6年を経過したが,いまだに仮設住宅暮らしを強いられてい
る被災者の方々が多数おられ,速やかに終の棲家の確保が待ち望まれ
ている。
 これらの復興作業のためには,土地の権利関係の確定が避けられな
い。特に,新たな土地での住宅地造成,道路・鉄道の拡幅・移転工事
関係では,移転先の土地の権利関係の確認が必要となる。
 東京弁護士会法友会では東日本大震災発生後から,年に2回から3
回,被災地支援目的の訪問を繰り返し,今までに訪問回数は合計14回
に及んでいる。この現地訪問の際に,被災地の市町村の担当者らから,
復興作業の苦労話をお聞きすることがあった。例えば,移転先用地を
調査するなかで,相続手続が済んでいない土地がかなり存在し,登記
の所有名義人の相続人の調査に時間がかかったもの,相続人が多数に
及び所有者の確定に時間を要したもの,戸籍上は相続人がいるが当該
相続人が所在不明となっているものなどの事案が存在しているため,
作業の遅れを避けるため,そのような土地を避けて用地取得を進める
こともあるということであった。
 用地取得にあたっては,目的の土地を速やかに,かつ,確実に取得
できること,そして,取得土地が用途に応じた利用ができるものであ
ることの確認が必要であることは言うまでもない。このような被災地
の置かれている現状に少しでも法律家として支援できることはないか
と考えて,法友会の一部のメンバーで被災地の土地問題についての勉
強会を開いていた。その成果が本手引きである。
 この手引きは,移転先用地の任意取得をする場合を想定し,場面ご
とに法律上の課題を整理しようとしたものである。例えば,登記名義
人が実在するかどうかの調査をどのように行うのか,すでに死亡して
いた場合に所有者を確定するにはどうするのか,共同相続人から特定
の相続人に権利を集中するにはどのような方法があるかなどについて
は,登記実務についての知識もないと円滑に手続を進めることができ
ないので,登記処理に至るまでの検討・調査すべき事項について,法
律家,登記専門家でなくても理解できるように説明することに努めた。
 もちろん,防集事業のため移転先用地を取得する方法として,土地
収用制度を利用することもできる。都道府県収用委員会による収用裁
決手続に,不明裁決制度が設けられており,起業者が真摯な努力をし
ても土地所有者等の氏名又は住所を知ることができない場合でも収用
裁決申請をすることを可能としている。国土交通省は防集事業の進展
のため,平成26年5月に「不明裁決申請に係る権利者調査のガイドラ
イン」をまとめている。この手引きは,用地の任意取得(購入)の際
に,土地所有名義人が所在不明の場合や生死不明の場合,相続があっ
たにもかかわらず名義人の変更がなされていない場合の対応について
整理したものであるが,土地収用の前提となる検討・調査も,任意取
得の際のものと重なる部分もあるため,土地収用の際にも利用価値が
あるものと思っている。
 この手引きは,もともと,用地の任意取得に関わった経験が少ない
市町村の用地担当者を想定して執筆したものである。したがって,経
験を積んだ方にとっては分かりきったことを記述した部分もあるが,
そうした方にとっても,改めて初歩的な部分を読むことにより忘れか
けていたことを思い出して,落ち度のない取引の実現に寄与すること
につながれば幸いである。
 また,本手引きは,被災地の土地問題に限らず,一般的な,相続登
記が未了の土地について所有者を特定して当該土地を取得する際にも
利用していただけるものとなるよう心掛けた。広く土地所有者の特定
と,円滑な所有権移転登記手続を進めていく際の参考になるならば幸
いである。
  
  平成29年春  
監修者  田中 康久
(元:仙台高等裁判所長官・法務省民事局
第2課長・同第3課長)       
編集者代表  皺 信男


《監修者・編集者・執筆者一覧》
  
監修者
田中 康久(弁護士 丸の内法律事務所)
  
編集者  
黒須 克佳(弁護士 黒須法律事務所)
小林 芳夫(弁護士 東京市ヶ谷法律事務所)
皺 信男(弁護士 皺綜合法律事務所)
高田 弘明(弁護士 暁総合法律事務所)
仲   隆(弁護士 東京不二法律事務所)
西中 克己(弁護士 西中・宮下法律事務所)
村林 俊行(弁護士 ロア・ユナイテッド法律事務所)
  
執筆者
池田 大介(弁護士 池田・高井法律事務所)
伊藤  献(弁護士 東京ブライト法律事務所)
植草 美穂(弁護士 東京四谷法律事務所)
上田 啓子(弁護士 梅本・栗原・上田法律事務所)
遠藤 啓之(弁護士 田島・寺西法律事務所)
大植 幸平(弁護士 鈴木武志法律事務所)
小野  傑(弁護士 西村あさひ法律事務所)
柿原 達哉(弁護士 司綜合法律事務所)
金山 裕亮(弁護士 国会通り法律事務所)
苅安 高明(弁護士 苅安総合法律事務所)
黒須 克佳(上掲)
後藤  大(弁護士 晴海パートナーズ法律事務所)
小林 芳夫(上掲)
高木理恵子(弁護士 弁護士法人多摩パブリック法律事務所)
高砂 太郎(弁護士 小野田高砂法律事務所)
皺 信男(上掲)
富澤 章司(弁護士 セントラル法律事務所)
仲   隆(上掲)
西中 克己(上掲)
長谷 正宏(弁護士 弁護士法人ATB)
濱田 六法(弁護士 まどか法律事務所)
水上  理(弁護士 水上法律事務所)
三原 利教(弁護士 若松総合法律事務所)
山内  隆(弁護士 セントラル法律事務所)
横山 宗祐(弁護士 横山山王法律事務所)
渡部 孝至(弁護士 はるかぜ総合法律事務所)
  
〔所属・肩書は本書刊行時〕





事例解説 子どもをめぐる問題の基本と実務


事例解説  子どもをめぐる問題の基本と実務
編・著者第二東京弁護士会子どもの権利に関する委員会[編]
発行年月2017年04月
ISBN978-4-417-01710-3
税込価格3,672円(本体価格:3,400円)
在庫有り
  
在庫があります

■解説
相談窓口で培われたノウハウの集大成!
  
  だから……
 ○具体的な解決方法や実践的な考え方を身につけることができます。
 ○精神医学,臨床心理学等の専門的観点からもポイントを抽出。
 ○事案の背後にある複雑な要因の理解の仕方がわかります。

 さらに〔事例〕〔Q&A〕〔おさえておきたい知識〕〔コラム〕
 多彩な形式で実務を網羅!


はじめに
 第二東京弁護士会子どもの権利に関する委員会は,いじめ,体罰,
虐待,少年事件など子どもを取り巻く様々な問題を幅広く取り扱って
おり,また,子どもに関わる法令等の研究,改正の是非,児童福祉や
法教育のあり方等について検討するなど,子どもの人権を守るために
活動を行っている団体です。現在において,深刻ないじめ自殺事件が
継続的に発生する状況が続いており,また,児童虐待の認知件数も年
々増加するなど,子どもの人権に関する状況は深刻さを増しています。
また,社会環境の激しい変化に伴い,子どもを取り巻く問題も多様化
及び複雑化の様相を呈してきております。例えば,インターネットが
社会インフラとして不可欠な地位を確立するとともに,インターネッ
トトラブルに子どもたちが巻き込まれることが増えていますし,また,
いじめや児童虐待などの深刻な問題の背景として,子どもの貧困など
の社会的要因や,発達障がいなど精神医学的な要因の存在が意識され
るようになってきました。このように多様化・複雑化した問題に弁護
士が対応するためには相当の知識及びノウハウの習得が不可欠ですが,
弁護士がこれらを獲得する機会は,かなり限られていたというのが実
情でした。
 ▼続きを読む


当委員会では,平成2年以降「子どもの悩みごと相談」という相談
窓口を開設し,電話及び面接により子どもに関する相談に取り組んで
きました。現在では「キッズひまわりホットライン」
(http://niben.jp/or/kodomo/)に名称を変更し,26年以上にわたり,
いじめ,体罰,虐待,少年事件に留まらず,なかには法的問題とは言
えない純然たる「悩みごと相談」も含めた様々な内容について,保護
者だけでなく子ども本人からも相談を受け,その解決に努めてまいり
ました。当委員会には,このような実際の事件処理を通じて培った経
験があり,また,その過程で,子どもの問題に関わる様々な専門家と
連携する機会も得て参りました。
 本書は,当委員会が有する資源を活用し,主として次の2点につい
て,子どもの問題の解決のために関与したいと考えておられる法律家
をはじめとする全ての方に対して,ご提供することを目的としており
ます。  
 〇劼匹發量簑蠅龍饌療な解決方法やそれに向けた実践的な考え方
を,実際の事件を参考に作成されたモデル・ケースに即してご紹介す
ること◆\鎖整絣悄の彎何翰学,社会学等の観点から,多様化・複
雑化した子どもの問題の理解の仕方をご紹介すること以上の目的が,
本書をもって達成できていることを願うばかりです。最後に,遅れが
ちな執筆作業にも粘り強くお付き合いいただき,本書の発行に並々な
らないご尽力をいただいた青林書院編集部の長島晴美様,加藤朋子様
に,心より感謝申し上げます。
  
平成29年4月
第二東京弁護士会子どもの権利に関する委員会委員長         
竹田 真
同副委員長/編集委員代表
下瀬 隆士


執筆者紹介
編 者
第二東京弁護士会子どもの権利に関する委員会

編集委員(五十音順)
青木 智子
伊東亜矢子
太田 絢子
佐田 理恵
下瀬 隆士
馬場 和佳

執筆者(五十音順)
青木 智子(弁護士)
赤石  理(弁護士)
伊東亜矢子(弁護士)
上沼 紫野(弁護士)
太田 絢子(弁護士)
大森 啓子(弁護士)
辛嶋 如子(弁護士)
倉田  徹(弁護士)
佐田 理恵(弁護士)
下瀬 隆士(弁護士)
大門あゆみ(弁護士)
竹内 彩香(弁護士)
多田  猛(弁護士)
張  文涵(弁護士)
寺谷 洋樹(弁護士)
馬場 和佳(弁護士)
平尾  潔(弁護士)
前岨  博(弁護士)
森本 周子(弁護士)
山本  翔(弁護士)
山本雄一朗(弁護士)
…………………………
阿部 愛子(臨床心理士)
田中  哲(医師)
松本 俊彦(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所,医師)
宮崎 豊久(インターネット博物館代表)
山本 直子(神奈川工科大学・清泉女子大学非常勤講師(社会学))
(肩書きは刊行時)







スポーツの法律相談


最新青林法律相談


スポーツの法律相談
編・著者菅原哲朗・森川貞夫・浦川道太郎・望月浩一郎 監修
発行年月2017年03月
ISBN978-4-417-01708-0
税込価格4,212円(本体価格:3,900円)
在庫有り
  
在庫があります

■解説
被害救済や予防をいかに実践するか?
ゞサ纂圈指導者,団体関係者,9埓関係者の3つの視点から,事例を元に
具体的な【Q】を掲げ,実務を端的に解説!


はしがき
2020東京オリンピック・パラリンピック開催は,声高な経済効果とともに
新国立競技場などスポーツ環境の改善・金メダル獲得をめざすアスリート
層への鍛錬・国際社会を揺り動かすアンチドーピング対策などプロアマを
問わずスポーツの大衆化・国際化・持続可能性を希求する先進国日本社会
に大きな影響とレガシー(遺産)を残すことになる。
スポーツ基本法は「スポーツは,世界共通の人類の文化」「スポーツを通
じて幸福で豊かな生活を営むことは,全ての人々の権利」(前文)と謳う。
生涯スポーツとして身体を動かす楽しみ,健康を維持する手段,チームワ
ークの協調性を超えて,この「スポーツ権」を基本的人権として生きた権
利にするには,まずスポーツ弱者からの権利主張が必須であろう。そして
公正な代表選考・スポーツ事故・スポーツ体罰・スポーツハラスメントの
被害救済など弁護士がスポーツ弱者の訴えを聞き,民事刑事の裁判・スポ
ーツ仲裁・交渉等で権利救済をなす実践的な活動がなければならない。
権利救済の結果が判例・先例としてメディアで広がり,国・地方自治体・
学校・企業・スポーツ団体などでスポーツのガバナンス(組織統治)・コ
ンプライアンス(法令遵守)が強化されて,スポーツ・インテグリティ
(高潔性)が確立していく。スポーツ弱者救済・規制法の個別立法に至る
前に,同じ被害を再発させない「生ける法」としての予防法学こそがスポ
ーツ法学の面目躍如たる分野である。
▼続きを読む


本書は2000年10月に発刊され,スポーツ法の礎となった日本スポーツ法学
会による『スポーツの法律相談』の全訂版として新進気鋭の学者・研究者
・法律実務家がQ&Aの形で書き下ろした。スポーツに挑戦し,エンタテ
イメントとして楽しみ,頑張れと声援する人々の法的悩みにやさしく答え
るため,スポーツ法に専門的に取り組む法律家が執筆した。法律相談の第
1章はアスリート・コーチ・トレーナー向け,第2章はスポーツ団体向け,
第3章はスポーツ行政向けである。
スポーツコラムもスポーツ法学の経験豊かな先達に依頼した。その意味で
スポーツ現場に携わる競技者・指導者・観客など様々な読者の解決の指針
となる実践的な法律指導書とも言える。
なお,最後になるが,一般社団法人日本スポーツ法支援・研究センターの
事務局員,青林書院編集部加藤朋子氏にお世話になったことを記して謝意
とするものである。
 2017年3月
監修者    
 菅原 哲朗
 森川 貞夫
 浦川道太郎
 望月浩一郎


監修者・編集者・執筆者一覧

監 修 者
菅原 哲朗(弁護士)
森川 貞夫(市民スポーツ&文化研究所代表)
浦川道太郎(早稲田大学名誉教授,弁護士)
望月浩一郎(弁護士)

編 集 者
合田雄治郎(弁護士)
徳田  暁(弁護士)
飯田 研吾(弁護士)
石堂 典秀(中京大学法務研究科教授)
高松 政裕(弁護士) 
安藤 尚徳(弁護士) 
堀田 裕二(弁護士) 
鈴木 知幸(国士舘大学法学部客員教授) 
松本 泰介(早稲田大学スポーツ科学学術院准教授,弁護士)

執筆者(執筆順)
合田雄治郎(上掲) 
渡邉健太郎(弁護士) 
椿原  直(弁護士) 
恒石 直和(弁護士)
栗木  圭(弁護士) 
諏訪  匠(弁護士)
佐藤 貴史(弁護士) 
小嶋 一慶(弁護士) 
山口 純子(弁護士) 
多賀  啓(弁護士) 
工藤 杏平(弁護士) 
阿部新治郎(弁護士) 
徳田  暁(上掲)
安富 真人(弁護士)
井手 裕彦(読売新聞大阪本社編集委員,日本障がい者スポーツ協会評議員) 
内田 和利(弁護士) 
石堂 典秀(上掲) 
水越  聡(弁護士) 
葊田 和彦(弁護士) 
岡本 大典(弁護士) 
今井 千尋(弁護士) 
金刺 廣長(弁護士) 
松原 範之(弁護士)
堀田 裕二(上掲)
八田  茂(日本オリンピック委員会キャリアアカデミー事業ディレクター) 
飯島  俊(弁護士)
佐伯 昭彦(弁護士)
石原 遥平(弁護士) 
川井 圭司(同志社大学政策学部教授)
竹之下義弘(弁護士) 
高松 政裕(上掲) 
飯田 研吾(上掲) 
生田  圭(弁護士)
八木 由里(弁護士)
小川 和茂(立教大学法学部特任准教授) 
大橋 卓生(金沢工業大学虎ノ門大学院イノベーションマネジメント研究科准教授,弁護士) 
安藤 尚徳(上掲) 
宅見  誠(弁護士)
阿部 慎史(公認会計士,税理士) 
萩原 崇宏(弁護士) 
岡村 英祐(弁護士) 
加藤 智子(弁護士) 
中川 義宏(弁護士)
宍戸 一樹(弁護士)
齋 雄一郎(弁護士)
西脇 威夫(弁護士)
浅川  伸(日本アンチ・ドーピング機構専務理事兼理事局長) 
関口 公雄(弁護士) 
矍掘]駄蕁癖杆郢痢法
堀口 雅則(弁護士) 
白井 久明(弁護士) 
渡辺  久(弁護士) 
斎藤 真弘(弁護士) 
伊東  卓(弁護士) 
冨田 英司(弁護士) 
山内 貴博(弁護士,弁理士)
足立  勝(米国ニューヨーク州弁護士,早稲田大学知的財産法制研究所招聘研究員)
山田 尚史(弁護士) 
桂  充弘(弁護士)
相川 大輔(弁護士)
吉田 勝光(桐蔭横浜大学スポーツ健康政策学部教授) 
岸  郁子(弁護士) 
鈴木 知幸(上掲) 
森川 貞夫(上掲) 
井上 洋一(奈良女子大学研究院生活環境科学系教授)
関谷 綾子(弁護士)
(肩書きは刊行時)


争点整理と要件事実 -法的三段論法の技術-


争点整理と要件事実 -法的三段論法の技術-
編・著者永島賢也 著
発行年月2017年03月
ISBN978-4-417-01707-3
税込価格3,456円(本体価格:3,200円)
在庫有り
  
在庫があります

■解説
本書のビジョンは民事訴訟の活性化である!!
●法的三段論法がなされる以前の段階にあって判決結果に対して決定的な影響
 を及ぼす法的な思考過程に着目し,争点整理手続において何を口頭でやり取
 りすべきかについて圧倒的な筆致で綴る訴訟実務家による意欲作!!

はしがき
   
 本書のビジョンは民事裁判の活性化である。そのため,争点整理の道標とな
る要件事実や,争点整理手続中に示される暫定的な心証開示,訴訟代理人や担
当裁判官との間でなされる口頭でのやり取りなどに触れながら述べている。
法的(判決)三段論法に代表される法的思考は,今や争点整理手続を通じた要
件事実論的な裁判実務によってミクロ正当化の領域に閉じ込められてしまいそ
うにも見える。本書は改めて法的思考の活動領域を回復し要件事実論の内側と
外側とを行ったり来たり自由にできるようになることを目指している。私の筆
力では甚だ力不足であるが,本書によって既に見慣れたはずのものが見知らぬ
もののように見えてきたとすればひとまずは成功といってもよいかもしれない。
法的(判決)三段論法は論理ではない。あくまで論理「風」のものであって,
演繹ではない。▼続きを読む


アリストテレス流の論理ではもとより,現代の述語論理をもってしても法的
(判決)三段論法を捉えることはできない。こうして,見慣れた法的(判決)
三段論法が見知らぬものに変わっていくとき,法的思考は活性化するきっかけ
をつかむのではないかと思われる。一度,見知らぬものに見えてしまうと,
もう同じところへ戻ることはできないかもしれない。しかし,活性化とはもと
もとそういう不安さえも前進するエネルギーに換えていくものであろう。
法的思考は発見の過程と正当化の過程に区別することができ,正当化の過程は
マクロ正当化とミクロ正当化に区別することができる。発見の過程を単なる心
理的なものと位置づけるのではなく,生活事態と規範仮説との間を行ったり来
たりしながら暗黙知の働く領域と位置づけてみてはどうか。マクロ正当化の過
程では発見の過程で見出された普遍化可能性等のある規範仮説が,主に制定法
から解釈によって導き出される複数の法規範から対応するものを見つけ出せる
かという領域と位置づけてみてはどうか。大前提たる法規範の正当化のほか,
小前提たる事実認定の正当化もマクロ正当化を構成する過程と位置づけてみて
はどうか。そのうえで大前提と小前提を行ったり来たりする視線の往復をアブ
ダクションとインダクションの繰り返しの過程と描いてみてはどうか。そのう
えで最終的にディダクション風に整えられたあたかも検算の役割を果たすよう
なものが法的(判決)三段論法と呼ばれてきたものではないか。そして,演繹
風の法的(判決)三段論法がなされる場面以外でも,原告訴訟代理人,被告訴
訟代理人,裁判所の三者間で対話が可能になれば,法的思考の全体で裁判過程
に関わり合うことができるのではないか。そのための方法として口頭でのやり
取りという手法は使えないであろうか。ミクロ正当化だけでなく,マクロ正当
化や発見の過程まで対話可能であるとするならば,価値判断にかかわるような
やり取りが成り立つ前提が必要になるであろう。そのためには法とは何らかの
客観的なるもの,各人の生を実現できるような公正さを目指すものと想定され
なければならないのではないか。現代社会においてもはや素朴な自然法論に回
帰することが難しいとすれば,仮に何らかの法実証主義的な視点で見るとして
もなお客観的なるものを志向できる前提が必要になるのではないか。現在の民
事裁判実務の主流といえる要件事実を意識した争点整理という観点から法的思
考のできるだけ全容を捉えてみたいと思う。
本書の成り立ちには高橋文彦教授,嶋津格名誉教授,亀本洋教授に貴重なご示
唆をいただいた。ここに記して謝意を表したい。また,とくに第10章について
は,日本弁護士連合会の民事裁判手続に関する委員会や,同委員会を通じて実
施されている最高裁民事局との協議会,各地の単位会での意見交換会,東京弁
護士会の民事訴訟問題等特別委員会や研修講座における私の経験が基礎となっ
ている。各委員会の弁護士の委員や,裁判官,研究者などから学ぶことができ
たことは誠に幸運であった。そして,なにより本書の原稿の出版を勧めていた
だいた松嶋隆弘教授に心から感謝の気持ちを伝えたい。
本書は,序章のほか12の章からなっている。最終章は,第1章から第11章まで
(第9章を除く)のエッセンスを短文形式でまとめたものである。第9章は比
較的最近の最高裁判決を具体例として用いたものである(最判平成27・4・9
と同28・3・1である)。原稿が出来上がった当初は12章のみであったが,本
書がめざす活性化の具体例があったほうがわかりやすいと考え序章を最後に執
筆した。モデルとなった今井和男先生(虎門中央法律事務所代表弁護士)には
日頃からその活動に尊敬の念を抱いており,改めて感謝の意を伝えたい。
最後に青林書院の長島晴美氏の力添えと,宮根茂樹編集長に短い期間である
にもかかわらず詳細な原稿チェックをしていただいたことに改めて謝意を表し
たい。宮根氏の力がなければ,この時期にこの原稿が書籍になることはなかっ
たと思う。本当にありがたいと感じている。

平成29年1月
筑波アカデミア法律事務所にて   
弁護士 永島賢也 


■著者
永島賢也:弁護士(筑波アカデミア法律事務所)


執行関係訴訟の実務 -基礎知識と手続の全体像の把握-


執行関係訴訟の実務 -基礎知識と手続の全体像の把握-
編・著者園部 厚 著
発行年月2017年02月
ISBN978-4-417-01706-6
税込価格3,132円(本体価格:2,900円)
在庫有り
  
在庫があります

■解説
裁判官が、執行関係訴訟の基本と重要な論点、手続の全体の流れを平易に解説!
■執行関係訴訟の法的性質等をどのように考えるのか?
■執行関係訴訟の手続上の問題をどのように考え訴訟を進行していくのか?
■訴訟、申立書等の記載例、判決主文など掲載!


執筆者紹介
園部 厚(そのべ あつし)
東京簡易裁判所判事


はしがき

 本書は,民事執行法に規定されている,請求異議の訴え,配当異議の訴え,
第三者異議の訴え,取立訴訟,執行文付与の訴え,執行文付与に対する異議の
訴えの民事執行に関する訴訟〔執行関係訴訟〕についての解説をしている。
 このような執行関係訴訟は,訴訟手続自体は,通常の訴訟手続と同様の手続
で行われるが,民事執行に関わる訴訟ということで,通常の訴訟とは異なる部
分も多い。このような執行関係訴訟に関わるのであれば,その点について理解
をしておかなければならない。そして,その執行関係訴訟については,執行に
関係するということで,同じような考え方に基づくものもあり,それらの訴訟
をまとめて説明することには意味があると思われる。
 執行関係訴訟については,その法的性質等について見解が分かれているとこ
ろもあり,その点について詳しく説明している文献も多い。もちろん,執行関
係訴訟の法的性質等をどのように考えるかにより,その訴訟の手続に影響する
のであるから,その点を考えることは大事であるが,問題はその点を検討した
上で,その後の手続上の問題をどのように考え,どのように進行していくかが
大事になってくると思われる。本書では,そのように考え,執行関係訴訟の法
的性質等を検討した上で,その後の手続上の問題をどのように考え,どのよう
に進行していくかについて,検討して解説をしており,執行関係訴訟における
実際の実務上の問題をどのように考えるかを中心に記載したつもりである。そ
のような意図で作成された本書が,執行関係訴訟に携わる者にとって,執行関
係訴訟について理解し,実務に携わる上で有用のものとなれば幸いである。
 最後に,本書の企画から携わり,本書の形式や判例等の資料の調査・表示等
に至るまで検討配慮いただき,刊行に導いていただいた長島晴美さんと,校正
をお手伝いいただいた皸羚疇犹泙気鵑法た瓦ら感謝を申し上げる。
  
  平成29年1月
   園部 厚





労災事件救済の手引 -労災保険・損害賠償請求の実務-


労災事件救済の手引 -労災保険・損害賠償請求の実務-
編・著者古川 拓 著
発行年月2017年01月
ISBN978-4-417-01704-2
税込価格4,644円(本体価格:4,300円)
在庫有り
  
在庫があります

■解説
●労災事件に取り組むなら見落とせない!
●過労死、過労自殺、メンタル、熱中症、アスベスト、腰痛・・・etc!
●労災認定実務とこれまでの裁判例をふまえた、すぐに役立つ知識とノウハウ、
 見落とせない注意点などを盛り込んだ労災事件の手引書!


はしがき
 弁護士登録以来,過労死・過労自殺や災害性の労災事故など様々な種類の労
災事案に取り組む機会が,比較的多くありました。被災労働者本人とその家族
(遺族)にとって「労災に遭(あ)う」ことは,突然生活の基盤である収入の
途を絶たれ途方に暮れることに加え,消えない後遺障害の苦痛や死亡事案では
かけがえのない家族との絆が断ち切られるという大きな悲哀であることを,こ
れまでの取り組みの中で痛感してきました。労災保険や損害賠償は,そのよう
な場合のせめてものセーフティ・ネットとなります。
 一方,労災事案は,労災請求等の行政手続と民事訴訟等の司法手続が基本的
にはそれぞれ独立していながら,一方の手続において生じたことが他方の手続
に対して法律上又は事実上の影響・効果を及ぼす場合があり,相互に密接な関
連性を有している点に特徴があります。
 そのため,労災事案に携わる弁護士等の専門家・関係者としては,取り組み
の対象となる事案の事実関係について,行政手続と司法(民事)手続それぞれ
の視点から検討・整理し,それらの関係を十分に踏まえた見通しを立てながら
,平行あるいは前後させて手続を進めていく必要があります。特に行政手続は
,通常業務において取り扱うことが必ずしも多くないにもかかわらず,関係法
令や裁判例等に加えて労災認定基準をはじめとする関連通達や行政実務の運用
実態を十分に踏まえて取り組む必要があります。
 また,労災事案のもう一つの特徴として,迅速で正当な補償や救済が求めら
れているにもかかわらず,被災者や遺族の手元に証拠資料が少なく,認定・救
済のために多大な苦労を強いられることがしばしばある点があげられます。
弁護士等の専門家・関係者にとっても,事実調査や証拠収集においてなすべき
ことが多く,それらの活動が功を奏するか否かが認定・救済の成否を左右する
といっても過言ではありません。
 本書は,労災事案において労災請求あるいは民事上の損害賠償請求等を通じ
て正当な認定・救済が得られるようにするために,請求実務上重要と考えられ
る事項についての解説を行ったものです。労災分野における深化は日々めざま
しいものがあり,近年でも平成26年の過労死等防止対策推進法の制定・施行を
はじめ,日々多くの法令・通達等の新設・改正等が行われるだけでなく,本書
執筆中も重要裁判例が数多く出され,実務に大きな影響を与えています。この
点をとってみても,労災保険・損害賠償請求の分野は広範かつ深遠であり,同
分野のあらゆる事項や関連法令・通達,具体的なノウハウ等のすべてを一冊の
書籍で網羅することはできません。とはいえ,具体的な事案に取り組むにあた
って最低限踏まえておくべき事項や知識をできる限り盛り込んだものであると
考えております。本書が被災者・遺族に正当な認定・救済を届ける一助となる
ことを願ってやみません。
 最後に,青林書院の逸見慎一社長及び宮根茂樹編集長には,執筆スケジュー
ルやレイアウト等に関し多大なご尽力をいただき,又無理をお聴き入れいただ
きました。その他,編集に携わっていただいた皆様にも格段のご協力をいただ
きました。末尾となり恐縮ですが,厚く感謝を申し上げる次第です。
  平成28年12月
  弁護士 古川 拓


古川 拓:弁護士(弁護士法人 古川・片田総合法律事務所)





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