
交渉の場としての相続-遺産分割協議をいかに行ったら良いか
相続交渉の本質に迫る本邦初のテキスト。
- 編・著者奈良 輝久・山本 浩二・宮坂 英司 編
- 判型A5判
- ページ数528頁
- 税込価格5,060円(本体価格:4,600円)
- 発行年月2014年10月
- ISBN978-4-417-01636-6
- 在庫
有り
■解説
●感情を重視したハーモニアス・ネゴシエーション
(調和型交渉)こそが遺産分割協議を成功に導く。
●遺産分割に悩む方,法律家,各種専門家の方に最適。
編 者
奈良 輝久:弁護士
山本 浩二:公認会計士・税理士
宮坂 英司:弁護士
執筆者
Kasumigaseki Innovative Negotiation Project(KINP)
大澤 一記:弁護士
大野 絵里子:弁護士
カライスコス アントニオス:関西大学法学部准教授
毛塚 重行:弁護士
土居 伸一郎:弁護士
堂免 綾:弁護士
奈良 輝久:弁護士
林 紘司:弁護士
宮坂 英司:弁護士
山本 浩二:公認会計士・税理士
若松 亮:弁護士
KINP一同
(敬称略,五十音順)
■書籍内容
目 次
はしがき
編者・執筆者一覧
凡例
序 章 遺言書がない場合の相続(本書の対象)
1 はじめに─遺産分割協議について
遺産分割協議と民法の条文
遺産分割協議の長期化・紛争化の原因
2 全員合意の必要性がもたらすもの
3 本書の提示する交渉ストラテジーの意義
4 相続の特殊性
5 遺産分割交渉遅滞を避けるには
遺産分割交渉遅延のデメリット
プラス・プラスの結果を出すよう心がけること
第1章 相続における交渉の基本姿勢
第1 相続手続の流れの確認
1 相続開始から遺産分割までの手続の概略
2 相続紛争解決の手段
3 遺産分割調停・審判の流れ
4 相続開始後の税務手続とタイム・スケジュール
準確定申告
相続税の申告
第2 セット・アップ
1 前提:準備事項
相続人の確定
相続財産の範囲の確定及び評価
法的問題(ルール)の存否及びその法的帰趨の早期把握
2 交渉の基本的検討課題(導入)
人(プレイヤー)の問題
相続財産(パイ)の問題
手続の段階的進行と法定相続分の縛りの強化の課題
第3 交渉の基本スタンス─ハーモニアス・ネゴシエーション&
ハーモニアス・チョイス(Harmonious Negotiation &
Harmonious Choice:調和型交渉論)の提唱─
1 遺産分割の特殊性と本書の交渉論が生まれた過程
遺産分割の特殊性
本書の交渉論が生まれた過程
2 私たちが提唱する遺産分割交渉の基本スタンス
トータルとしての7つの基本姿勢
進行段階ごとの交渉の基本的なやり方
私たちが提唱する交渉論の命名─遺産分割特有の交渉論に
ふさわしい名とは?
第2章 相続における交渉と交渉理論
第1 交渉の基礎理論と相続交渉における限界
1 ハーバード流交渉術と分配型交渉のハーモニー
交渉論とその発展経過
ハーバード流交渉術とは?
『新版 ハーバード流交渉術』(金山宣夫=浅井和子訳,
TBSブリタニカ,1998年〔第2版〕)
『新ハーバード流交渉術─感情をポジティブに活用する』
(印南一路訳,講談社,2006年)
ハーバード流交渉術は日本における相続交渉にも通用するか
遺産分割交渉と分配型交渉
2 説 得 術
説得技法の3類型
感情のこじれを修復するための説得技法
3 用 語
目標点と抵抗点
合意可能領域(ZOPA)
BATNA(バトナ)
分配型交渉と統合型交渉(原則立脚型交渉)
価値創造
パレート改善,パレート最適
ログローリング
パイの大きさは変わらないという思い込み(fixed- pie bias)
情報の非対称性(情報の偏在)
ゲーム理論
行動経済学
アンカリング効果
フレーミング効果
コミットメント(commitment)
部外者のレンズと部内者のレンズ
バルコニーから状況を見る
フット・イン・ザ・ドア技法
ドア・イン・ザ・フェイス技法
ローボール技法
4 ディシジョン・ツリー
相手の立場になって「先の手」を読む
ミニマックス戦略
ディシジョン・ツリー
相続交渉での活用方法
まとめ
第2 交渉の場としての相続の特徴
1 はじめに─相続における交渉の開始時期等
2 対価性の有無
エスカレーションが生じる素地
エスカレーションを回避するため考慮すべきこと
3 濃い人間関係
4 過去の行為の評価
5 交渉当事者の固定性・非選択性─交渉の不回避性
交渉当事者を変更するというBATNAの不存在
一般的なBATNAが存在しないことを踏まえて考慮すべきこと
交渉の不可避性とその基準
6 その他の特徴
相続財産の範囲に関する情報の偏在
事前準備の重要性
7 ゲーム理論の観点からみた遺産分割協議の特徴
交互進行型の繰返しゲーム
相続交渉における「囚人のジレンマ」
無限回の繰返しゲームにおける「協調」の重要性
8 相続財産(パイ)の固定性
9 包括的一括的合意形成
ログローリングの可能性
一部分割合意の利用
10 交渉終了後の人間関係修復可能性
11 まとめ
■column 1 遺産分割協議の複雑化
第3 遺産分割交渉の基本的検討課題
(その1)─相続財産の範囲及び性質(パイの問題)─
1 遺産分割の対象となる遺産の範囲
分割対象財産とは
分割対象財産の範囲をどう設定するか
最後に審判が控えていることとの関係
2 遺産の評価
遺産の評価の必要性
遺産評価の基準時
遺産評価の方法
各遺産評価における留意点
3 分割の方法
まずは分割対象財産の範囲を交渉しやすく設定する
各相続人の選好等の相違をいかす
相続財産が多数個ある場合の分け方
主観的評価を客観的価値に投影する
一部分割の利用
評価が可変的な財産としての不動産
相手の譲歩を引き出すために本音と異なる希望財産を
主張する戦略は有効か
第4 遺産分割交渉の基本的検討課題
(その2)─相続人(プレイヤー)の数,個性等─
1 少数当事者(2名)の場合
事前準備
二当事者間交渉の特徴
3つの事例に基づく遺産分割交渉の検討
相続財産の組合せ(可変性・非可変性)の視点
分配型交渉(win-loseゲーム)の視点
相続人の個性が相続交渉に与える影響(総論)
情報の偏在とその解消
リーダーシップ論
バイ・プレイヤーの問題
効果的な交渉戦術(戦術の有効性とその限界)
2 多数当事者(3名以上)の場合
多数当事者における遺産分割協議とは
二当事者対立構造への還元
相続人が極端に多い案件について
多数当事者の事例検討
多数当事者交渉で留意すべき点
■column 2 N式交渉術 33の鉄則
第5 遺産分割交渉の基本的検討課題
(その3)─各交渉段階における専門家の有効利用─
1 調停人,裁判官の存在(裁判前交渉と裁判内交渉)とその有効利用
はじめに
裁判前交渉での自由度
裁判前交渉での交渉内容
裁判前交渉から裁判内交渉への移行のプレッシャー
裁判内交渉の特徴との関連
抵抗点(交渉の打切り点)と裁判前・裁判内交渉との関連
調停人・裁判官と敵対しないことの有用性
情報量の偏在(非対称性)との関連
当事者内で不適切なリーダーシップをとろうとする者への対応
まとめ
2 相続交渉と弁護士
相続交渉と弁護士の関わり
弁護士が相続手続において果たす役割
相手方の弁護士に対してどのように相対すべきか
最後に
第3章 ルール:相続におけるルールの概要─法律,
判例・通説による理解─
第1 前提問題&付随問題
1 総論(前提問題&付随問題とは何か)
2 遺産分割の前提問題
相続人の範囲についての争い
遺言書の効力又は解釈についての争い
遺産分割協議書の効力についての争い
遺産の帰属についての争い
3 遺産分割に関連する付随問題
使途不明金に関する問題
葬儀費用や香典に関する問題
同族会社の経営権をめぐる問題
遺産管理費用の清算に関する問題
遺産収益の分配の問題
相続債務の整理・分担の問題
相続人固有の共有持分の問題
その他の問題
4 前提問題や付随問題が相続交渉に与える影響
第2 法定相続分
1 法定相続分とは
2 法定相続分・条文
配偶者と子
配偶者と直系尊属
配偶者と兄弟姉妹
子のみ,直系尊属のみ,兄弟姉妹のみ
代襲相続
3 非嫡出子の法定相続分に関する違憲決定
(最大決平25・9・4民集67巻6号1320頁)と民法改正
非嫡出子の法定相続分について
事案の概要
決定要旨
本決定の効果と法改正
4 遺産分割の審判における法定相続分の取扱い
審判における法定相続分
具体的相続分
遺産分割の対象とならない相続財産
5 法定相続分と遺産分割交渉
第3 特別受益(民903条)
1 特別受益とは
意 義
種 類
算定方法
評価時点
主張立証責任
持戻し免除の意思表示
2 特別受益にあたるかが問題とされる例
不動産の無償使用
継続的な金銭援助
学 資
事業資金
生命保険
死亡退職金等
3 特別受益者の範囲
代襲相続
二次相続
相続人でない者
4 交渉における特別受益の主張
裁判における特別受益の主張・立証の困難さ
交渉のツールとしての利用法
第4 寄与分(民904条の2)
1 寄与分とは
意 義
態様(民904条の2第1項)
主張立証責任
2 寄与分にあたるかが問題とされる例
家業従事型
金銭等出資型
療養看護型
そ の 他
3 寄与分権者の範囲
4 算定方法
5 手 続
6 評価時点
7 交渉における寄与分の主張
裁判における寄与分の主張・立証の困難さ
交渉のツールとしての利用法
第5 相続欠格,廃除(民891条・892条)
1 相続欠格(民891条)
欠格の意義
欠格の事由
欠格の効果
欠格の宥恕
2 相続人の廃除(民892条)
廃除の意義
廃除の事由
廃除の方法
廃除の効果
廃除の取消しと宥恕
第6 遺留分減殺請求
1 遺留分について
遺留分の意義
遺留分権・遺留分権利者
遺留分権の放棄
遺留分の率
遺留分の額の算定
2 遺留分減殺請求権
減殺請求権の具体例等
遺留分侵害額の算定
共同相続における減殺請求
減殺請求権者と相手方
3 減殺の方法
4 減殺の順序
5 減殺の効力
現物返還の原則と価額弁償
価額弁償の場合の問題点
転得者との関係
6 減殺請求権の消滅
7 交渉のツールとしての利用法
第7 税 金
1 はじめに
2 相続税額の計算
正味遺産額(課税価格)
遺産に係る基礎控除額(相税15条)
相続税の総額
各人の納付税額
3 相続税の申告と納付
相続税の申告義務者
相続税の申告期限と提出先
相続税の納付
4 遺産分割の方法
遺産分割の方法
遺産分割の仕方と相続税額の関係
代償分割の取扱い
遺産を譲渡した場合
遺産の再分割をした場合
5 遺産が未分割の場合
正味遺産額(課税価格)の計算
各人の納付税額の計算
当初の相続税の申告と納付
遺産の分割が行われたとき
6 遺贈があった場合
7 遺留分の減殺請求があった場合
遺留分減殺請求権の行使時の課税
価額弁償時の課税
相続税の申告
8 遺産の情報の収集方法
第4章 事業承継
1 はじめに
2 自社株式の議決権の取扱い
会社法による議決権の制限
自社株式が未分割の場合の議決権の行使
3 相続発生前の事業承継対策
会社法を活用した対策
自社株式の移転方法
遺留分への対応
4 相続発生後の遺産分割交渉
交渉の特徴
事例の検討
5 事業承継税制
経済産業大臣の認定
税務署への申告
申告期限から5年間(経営承継期間)
申告期限から5年経過後
猶予税額の免除
第5章 ハーモニアス・ネゴシエーションをめぐる7つの場面
1 はじめに
2 相手方が希望を言わないとき
事 例
解 説
3 相手方が法定相続分を超える提案から譲歩しないとき
事 例
解 説
4 自分が前言撤回をしてしまったとき
事 例
解 説
5 相手方が前言を撤回してきたとき
事 例
解 説
6 これまで自分と協調していた他の相続人が非協調に転じたとき
事 例
解 説
7 リーダーの交代を求められたとき
事 例
解 説
8 一次相続について協議途中に二次相続が発生したとき
事 例
解 説
巻末付録1 遺産分割チェックリスト
巻末付録2 弁護士が用いる交渉戦術
事項索引
判例索引
編者・執筆者紹介