学校事故 判例ハンドブック
- 編・著者坂東司朗・羽成守 編
- 判型A5判
- ページ数580頁
- 税込価格6,380円(本体価格:5,800円)
- 発行年月2015年02月
- ISBN978-4-417-01648-9
- 在庫
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■解説
●いじめ・体罰に対する社会的関心が一層高まった現代。
裁判例から学校事故の防止・解決策を探る。
●学校事故の裁判例の特徴の一つとして第一審、控訴審等での注意義務違反の
存否認定が異なり、結論が覆ることがある。損害賠償請求では注意義務を
どう据えるか(被害者側)、どの観点を重視し防御するか(学校側)の分析
検討が重要である。精選した61の判例で解説する。
はしがき
本書は,新聞記事等においても目にすることが珍しくないいわゆる学校事故
に関し,法律の専門家のみならず教職員・一般市民の方にもわかりやすいよう
に,過去の裁判例を解説したものである。
ところで,学校管理下における災害(疾病・負傷)は,小学校が417,292件と
件数では最多であるが,発生率では中学校が11.19%と最多である(独立行政法
人日本スポーツ振興センター「平成23年度災害共済給付状況」)。このように
災害発生率が最多である中学校において,平成24年度から武道(柔道・剣道・
相撲のいずれか)が必修化され,多くの中学校が柔道を選択している。この点
,従前から柔道部活動中に生徒に重篤な後遺症が残存あるいは死亡するという
重大な結果を伴う事故が多く発生し民事訴訟となるケースも見られる中,公益
財団法人全日本柔道連盟によれば,各中学校の教育現場では柔道を指導できる
教員が少ないというのが現状とのことである。したがって,必修化により全生
徒が参加する武道授業において,痛ましい事故発生を防止するためには,適切
な指導体制の構築・強化が急務である。
また,学校生活におけるいじめ問題については,平成24年に発生した大津中
学校いじめ自殺事件が社会的耳目を集めた。同事件においては,学校が自殺発
生後に在校生を対象に行ったアンケート結果の一部を隠蔽したり,教育委員会
が調査を行わないなど,学校・教育委員会の無責任・無自覚な対応に社会的な
衝撃が走ると共に,教育現場である学校及び教育委員会に対し家宅捜索が入る
という前代未聞の事態に至った。同事件を受け平成25年9月には「いじめ防止
対策推進法」が施行されるに至った。そして,体罰についても,平成24年に公
立高校部活動顧問教諭による体罰・生徒自殺事件が発生し,顧問教諭が刑事処
分を受ける事態にまで発展した。
このような時流の中,本書では過去の学校事故に関する裁判例を通じて,主
として責任の所在に関する分析を行った。学校事故(いじめ・体罰を含む)に
関する裁判例の特徴の一つとして,第一審判決と控訴審判決,あるいは上告審
判決で注意義務違反の存否の認定が異なり,結論が覆ることが珍しくないこと
を指摘できる。
かかる特徴を踏まえれば,実務家が学校事故に関する損害賠償請求事案を手
がけるに当たり,注意義務をどのように据えるか(被害者側),どのような観
点を重視して防御するか(学校側)に関し,過去の裁判例の分析検討が一層重
要になることは言うまでもない。
本書では,全体を9章に分け,総論(第1章)にはじまり,幼稚園・保育園
(第2章)から高等専門学校・大学(第6章)まで教育機関ごとにおける学校
事故,特に施設瑕疵の存否が問題となった学校事故(第7章),いじめ
(第8章)・体罰(第9章)という構成にした。各種教育機関ごとに章を設け
た理由は,教師及び学校に求められる注意義務の内容・程度が児童・生徒の年
齢や判断能力の程度によって異なるものであること,及び読者が本書を手にし
た際,教育機関による章分けの方が関心事項に対するアプローチが容易である
と考えたためである。その上で,教育機関ごとに授業中・クラブ活動中といっ
た活動時間帯別に判例を取り上げることによって,活動時間帯によって求めら
れる注意義務が異なる場合があることを把握しやすく工夫に努めたつもりであ
る。
編者としては,いじめ・体罰に対する社会的関心が一層高まった時代におい
て,本書が学校事故の防止・解決の一助になることを切に願うものである。
平成27年(2015年)1月
坂東 司朗
羽成 守
【編集者】
坂東 司朗(弁護士 坂東総合法律事務所)
羽成 守(弁護士 ひびき綜合法律事務所)
【執筆者】
坂東 司朗(弁護士 坂東総合法律事務所)
荒川真紀子(弁護士 坂東総合法律事務所)
羽成 守(弁護士 ひびき綜合法律事務所)
吉原 隆平(弁護士 吉原隆平綜合法律事務所)
坂田 信太(弁護士 ひびき綜合法律事務所)
川原奈緒子(弁護士 東京グリーン法律事務所)
谷内田 誠(弁護士 坂東総合法律事務所)
伊藤 康典(弁護士 横浜みなとみらい法律事務所)
吉野 慶(弁護士 坂東総合法律事務所)
坂本 晃一(弁護士 坂東総合法律事務所)
坂東 雄大(弁護士 坂東総合法律事務所)
円谷 順(弁護士 坂東総合法律事務所)
石田 香苗(弁護士 坂東総合法律事務所)
垣内 惠子(弁護士 涼和綜合法律事務所)
園部 敏洋(弁護士 坂東総合法律事務所)
(執筆順)
■書籍内容
総 論
1 学校事故における学校設置者の責任法理
⑴ 学校事故の意義
⑵ 不法行為責任
⑶ 債務不履行責任
⑷ 施設瑕疵事故における責任法理
2 教師の過失の具体的内容
⑴ 教師の注意義務
⑵ 教師の注意義務が及ぶ範囲
⑶ 教師の注意義務の具体的内容
⑷ 教師の注意義務と被害児童・生徒の事理弁識能力の関係
3 生徒間事故
⑴ 教師の責任
⑵ 親権者の責任
⑶ 教師と親権者の責任の関係
4 過失相殺
⑴ 被害生徒の過失
⑵ 被害生徒側の過失
⑶ いじめ・体罰による自殺における被害者側の事情の考慮
5 いじめ
⑴ いじめの意義
⑵ いじめにおける学校及び親権者の責任
⑶ いじめと被害生徒の自殺
⑷ 調査報告義務
6 体 罰
⑴ 体罰の意義
⑵ 有形力の行使と体罰
⑶ 体罰と自殺
第1章 保育園・幼稚園における事故
〔概 説〕
1 幼稚園と保育園/2 入園・入所契約から生ずる注意義務
第1 保育園
1 うつぶせ寝と死亡
(1) 福岡高判平成18年5月26日
2 熱中症による死亡
(2) さいたま地判平成21年12月16日
第2 幼稚園
1 園庭遊技時間中の死亡
(3) 浦和地判平成12年7月25日
2 東日本大震災避難中の津波による死亡
(4) 仙台地判平成25年9月17日
第2章 小学校における事故
1 小学生の責任能力/2 親権者,代理監督者の責任
3 遊び等による事故の違法性阻却/4 授業以外での事故
第1 授業中の事故
1 サッカーボールによる失明
(5) 最判昭和62年2月13日
2 水泳逆飛び込み事故
(6) 松山地判平成11年8月27日
3 組み立て体操落下事故
(7) 名古屋地判平成21年12月25日
4 自習中の事故
(8) 最判平成20年4月18日
5 校外授業中の事故
(9) 京都地判平成8年8月22日
6 清掃中の衝突事故
(10) 東京地判平成23年9月5日
第2 放課後の事故
1 校内けんか事故
(11) 大阪地判昭和50年3月3日
第3 校外活動中の事故
1 林間学校における事故
(12) 大阪地判平成24年11月7日
2 遠足における事故
(13) 浦和地判平成3年10月25日
第4 給食中の事故
1 食物アレルギー
(14) 札幌地判平成4年3月30日
2 食中毒
(15) 大阪地堺支判平成11年9月10日
第3章 中学校における事故
〔概 説〕
1 中学校における学校教育について/2 正課授業について
3 課外クラブ活動について/4 休憩中や放課後における事故について
5 まとめ
第1 授業中の事故
1 柔道―授業中における柔道練習中の傷害
(16) 松山地判平成5年12月8日
2 理科―授業中における理科実験中の事故
(17) 静岡地沼津支判平成元年12月20日
3 学校行事(校内)中の事故−大掃除における窓ふき時の転落事故
(18) 大阪地判平成8年12月27日
第2 部活中の事故
1 柔道―部活中における柔道練習中の傷害
(19) 最判平成9年9月4日
2 熱中症
(20) 名古屋地一宮支判平成19年9月26日
3 部活準備中のふざけ
(21) 大阪高判平成10年5月12日
第3 始業前・放課後・特別教育活動の事故
1 授業開始前の事故−授業開始前の時間帯における生徒間事故
(22) 仙台地判平成20年7月31日
2 放課後の事故
(23) 東京地判昭和60年5月31日
3 登山活動中の事故
(24) 松山地今治支判平成元年6月27日
4 修学旅行中のけんか
(25) 広島高判昭和63年12月7日
第4章 高等学校における事故
〔概 説〕
1 高等学校の意義と学校事故における法的責任根拠
2 本章の概要とその他のクラブ活動中の事故
第1 授業中の事故
1 水泳
(26) 東京地八王子支判平成15年7月30日
2 柔道
(27) 名古屋地判平成4年6月12日
第2 部活中の事故
1 サッカー部
(28) 高松高判平成20年9月17日
2 ボクシング部
(29) 札幌高判平成10年2月24日
3 柔道部(吉野 慶)
(30) 東京高判平成25年7月3日
4 山岳部(吉野 慶)
(31) 浦和地判平成12年3月15日
5 陸上部
(32) 福岡高判平成22年2月4日
第3 特別課外活動の事故
1 文化祭における化学部
(33) 福岡地判昭和61年11月14日
判タ626号174頁
2 運動会における負傷
(34) 福岡地判平成11年9月2日
3 修学旅行中のふざけ合い
(35) 津地判昭和54年10月25日
4 修学旅行中の水死
(36) 横浜地判平成23年5月13日
第4 放課後の事故
1 寄宿舎の自由時間
(37) 東京地判平成12年12月22日
第5章 高等専門学校・大学における事故
〔概 説〕
1 高等専門学校・大学における事故の類型
2 国立大学法人たる大学での事故の訴訟の被告
第1 高等専門学校
1 合宿
(38) 最判平成2年3月23日
2 課外活動
(39) 福岡高判昭和55年9月8日
第2 大 学
1 応援部による暴行死
(40) 最判平成4年10月6日
2 合気道部練習中の死亡
(41) 松山地判平成8年8月28日
3 サークル合宿中の水死
(42) 大阪地判昭和61年4月17日
4 コンパでの急性アルコール中毒
(43) 東京地判昭和55年3月25日
第6章 養護学校・特別支援学級における事故
〔概 説〕
1 養護学校・特別支援学級について/2 障害児の事故について
3 担当教諭の注意義務/4 調査報告義務・建物の瑕疵等について
5 過失相殺・素因減額/6 損害について
第1 授業中の事故
1 水泳授業中の生徒の溺死事故
(44) 横浜地判平成4年3月5日
第2 休み時間の事故
1 転落
(45) 東京地八王子支判平成20年5月29日
第7章 施設瑕疵と事故
〔概 説〕
1 教育施設の瑕疵/2 通常有すべき安全性/3 遊戯施設の瑕疵/
4 教育器具の瑕疵
第1 学校プールと瑕疵
1 取水口への足吸い込み事故
(46) 大阪地判昭和56年2月25日
2 飛び込み事故
(47) 大阪地判平成7年2月20日
第2 グランドの瑕疵
1 テニス審判台
(48) 最判平成5年3月30日
2 ハンマー投げ練習場
(49) 浦和地判平成8年10月11日
第3 校舎の瑕疵
1 体育館の天井
(50) 大阪地判昭和51年2月27日
第8章 いじめ
〔概 説〕
1 いじめ防止対策推進法の制定/2 いじめの社会問題化の波
第1 小学校
1 三室小学校放課後いじめ事件
(51) 浦和地判昭和60年4月22日
2 転校生
(52) 金沢地判平成8年10月25日
第2 中学校
1 いじめ行為と統合失調症発症
(53) 広島地判平成19年5月24日
2 いわきいじめ訴訟
(54) 福島地いわき支判平成2年12月26日
3 神奈川津久井いじめ自殺事件控訴審判決
(55) 東京高判平成14年1月31日
第3 高等学校
1 いじめと自殺
(56) 横浜地判平成18年3月28日
2 いじめによる精神疾患発症後の自殺
(57) 名古屋高判平成24年12月25日
第9章 体 罰
〔概 説〕
1 体罰の意義/2 体罰に関する裁判例/3 暴言や教育的指導と体罰
第1 体罰
1 有形力の行使と体罰
(58) 大阪高判昭和30年5月16日
2 軽微な有形力の行使と体罰
(59) 東京高判昭和56年4月1日
3 教育的指導と体罰
(60) 最判平成21年4月28日
4 体罰と自殺
(61) 神戸地姫路支判平成12年1月31日
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